文化、ちょっと集まってみよう【イベント】

【紅型と文化のこれから】

ー 落語と紅型、文化が出会う工房イベント開催に寄せて ー

皆さま、おはようございます。

日々あたたかなご縁をいただきながら、私たちの工房での活動が静かに広がっていることに、あらためて感謝の思いでいっぱいです。

私たちはこれまで、**紅型(びんがた)**という伝統技術をただ“守る”だけでなく、それを通して文化や人のつながりを「伝えていく」「ひらいていく」ことを何よりも大切にしてきました。

時代の流れの中で、どれだけ美しく残っている技術であっても、それを受け取り、感じ、語り合う“場”がなければ、文化は静かに遠ざかってしまう。そんな危機感のようなものを感じながら、私たちは日々、ものづくりと向き合っています。

そのような思いの中から生まれたのが、「工房を開いて、人が集まる場をつくる」という取り組みでした。
地域の方々、文化に関心のある方、観光で訪れた方——そうしたさまざまな人々が、ほんのひととき、紅型を囲んで集い、語らい、何かを感じ取ってもらえるような、そんな時間を工房で持ちたいと願って始めたのがこのイベントです。


■ 落語と紅型、ふたつの“文化”が交わる日

そして、2026年の幕開けとともに、今年最初のイベントが、いよいよ明日開催されることとなりました。

今回は、「落語と紅型」という一風変わった組み合わせでの企画。
伝統工芸と伝統芸能——一見、異なる分野のように見えるかもしれませんが、どちらも「人の暮らしの中で育まれてきた文化」という点では、根っこでつながっています。

どちらも、“技”であると同時に、“心を伝える言葉”でもあり、“物語”でもあります。
そんなふたつの文化が同じ空間に共にあるとき、どんな化学反応が起きるのか。
正直に言えば、私たち自身も少しワクワクしながらこの日を待っています。

ありがたいことに、定員を大きく上回る方々からお申し込みをいただき、すでに満席となりました。
この場を借りて、関心を寄せてくださった皆さまに、心よりお礼申し上げます。


■ 特別な場所で、特別な時間を

今回のイベントの開催場所は、私の祖父——十四代目の祖父栄喜が晩年を過ごした家をそのまま活かしたスペースとなっています。
この家には、長い年月をかけて蓄積されてきた空気や気配があります。

木の柱一本、畳の匂い一つにも、そこに暮らしていた人の営みが染み込んでいて、どこか懐かしさのようなものを感じる空間です。
そんな場所で、紅型の作品や工程に触れながら、落語という“語り”の文化に出会う時間を持てることは、私たちにとっても非常に意味のあることだと感じています。

何よりも、文化というものは、人がいて初めて成り立つものです。
使われなくなった道具も、語られなくなった物語も、人との関わりの中で再び命を吹き込まれていく。


■ 「文化が生きる場所」を少しずつつくっていく

このイベントは、私たち工房が自主的に企画してきたもので、今回で6回目となります。

これまで、決して派手な取り組みではありませんでした
試行錯誤を繰り返しながら、どうしたらもっと自然なかたちで文化が人と人をつなげていけるのか——そんなことを手探りで探ってきた2年間だったように思います。

でも、実際に人が集まり、笑い合い、語り合う場が生まれるたびに、「ああ、こういうことなのかもしれない」と、何かが少しずつ見えてきた感覚があります。

無理に形式をつくるのではなく、自然と集まりたくなる空気をどう育てていくか
そのためには、まず私たち自身が楽しみ、出会いを大切にし、続けていくこと——

そんなふうに思いながら、地道に回を重ねてきました。


■ 10年後を思い描きながら

この小さなイベントが、10年後には「紅型を通じた文化交流の時間」として機能している未来を、私はぼんやりとですが、思い描いています。

たとえば、春・夏・秋・冬と、年に4回。
季節ごとに文化をテーマにしたイベントが自然に開かれ、地元の方と訪れた方が混ざり合いながら、笑顔で過ごしている——

そんな風景がこの場所に根づいていたら、どんなに素敵だろうと、思わずにはいられません。

その未来を育てていくためにも、まずは目の前の一つひとつの出会いを大切にすること
今ここで感じた感動や気づきを、きちんと誰かと分かち合っていくこと——

それが、文化の未来をつくる最初の一歩になるのだと思います。


■ 最後に

今回のイベントに参加してくださる皆さまには、あらためて心から感謝申し上げます。
この場に集まっていただけること自体が、私たちにとっては大きな励みであり、次につながる力になっています。

そして、もしこの文章を読んでくださっている方の中で、
「今回は行けなかったけれど、次は行ってみたいな」と感じてくださった方がいらっしゃれば、それは何より嬉しいことです。

実は、次回は4月頃の開催を考えながら、少しずつ計画を立て始めています。
内容についてはまだ検討中ですが、4月はお琴の会にしてみるのもいいのではないか、と考えているところです。
紅型とお琴、それぞれの音や色、空気が重なり合う時間を、どんなかたちでつくれるか。
今はそんなことを思い巡らせています。

全体の流れとしては、
1月・4月・7月・10月と、年に4回ほど、季節に合わせた集まりができたらいいな、という構想もあります。
ただ、無理に形を決めすぎるのではなく、その時々のご縁や流れに合った内容を考えていくことも、大切にしたいと思っています。

これからも、紅型という文化を通して、

私たちなりの歩幅で、この場所を続けていきたいと思っています。

どうぞ今後とも、あたたかく見守っていただけましたら幸いです。

関連記事

イベントします!!ー琉球の富を探る 茶の湯のひと時

「伝統の中に未来を見る:紅型イベントを終えて」

祖父の未来日記(栄喜14代)

紅型に、時間と祈りを宿す

私は紅型を、単なる染色技法ではなく、
沖縄という土地で積み重ねられてきた時間や祈り、
そして暮らしの感覚を受け止める「文化の器」だと捉えています。

布に色を置くという行為の奥には、
自然へのまなざし、人への想い、
そして生き方そのものが静かに重なっています。
その感覚を、できるだけ正直に、今の時代の言葉と形で手渡していくこと。
それが、私が紅型と向き合い続ける理由です。


城間栄市プロフィール 生い立ちと紅型との距離

1977年、沖縄県生まれ。
城間びんがた工房十五代・城間栄順の長男として育ちました。

幼い頃から、工房は日常の延長線上にありました。
染料の匂い、布を干す風景、
職人たちの背中や交わされる何気ない会話。
それらは特別なものというより、生活の一部として、自然に身の回りにありました。

本格的に工房に入り、父のもとで修行を始めたのは、
沖縄県芸術祭「沖展」への初入選をきっかけとしています。
紅型を「受け継ぐもの」としてではなく、
自分自身の人生として引き受ける覚悟が、
そのとき初めて定まったように思います。


外の世界で学んだこと

2003年からの約2年間、
インドネシア・ジョグジャカルタに滞在し、
バティック(ろうけつ染)を学びました。

異なる気候、異なる宗教観、異なる生活のリズム。
その中で工芸がどのように根づき、人々の暮らしと結びついているのかを、
現地での生活を通して体感しました。

この経験は、
「伝統を守ること」と「変化を受け入れること」は、
決して相反するものではない、
という確信を私にもたらしました。


受賞・出展についての考え方

これまで、沖展、日本工芸会、西部伝統工芸展、
MOA美術館岡田茂吉賞など、
いくつかの評価や賞をいただいてきました。
また、文化庁主催の展覧会や、
「ポケモン工芸展」など、国内外に向けた企画展にも参加する機会を得ています。

こうした節目を迎えるたびに、
私自身の評価以上に、
紅型という存在を知ってもらう機会が広がっていくことに、
大きな喜びを感じています。

一つの作品が、
「沖縄にはこういう染め物があるのですね」
という小さな気づきにつながる。
その積み重ねこそが、紅型の未来を静かに支えていくのだと感じています。


制作について

制作では、伝統的な技法を大切にしながらも、
その時代、その感覚にしか生まれない表現を探り続けています。

代表作の一つである紅型着物《波の歌》では、
沖縄の海を泳ぐ生き物たちの姿を、
藍色を基調に、リズムと奥行きを意識して表現しました。

新しさを声高に主張するのではなく、
布に触れた人が、
どこか懐かしさや安心感を覚えるような仕事を目指しています。


今、そしてこれから

現在は、
城間びんがた工房十六代代表として制作を行いながら、
日本工芸会正会員、沖展染色部門審査員、
沖縄県立芸術大学非常勤講師としても活動しています。

これらの役割もまた、
紅型を「閉じた世界」に留めず、
次の世代や、まだ出会っていない人たちへと
静かにつないでいくための一つの手段だと考えています。

これからも、
展覧会やさまざまな協働を通して、
紅型という文化に触れる“入り口”を、少しずつ増やしていきたい。
それは広げるためというより、
必要な場所に、必要なかたちで、そっと灯りを置いていく
そんな感覚に近いものです。


おわりに

公式ホームページでは、
紅型の歴史や背景、制作に込めた考えを、
少し丁寧に言葉にして残しています。

Instagramでは、
職人の日常や工房の空気、
沖縄の光や緑の中で息づく紅型の表情を、
より身近な距離感でお伝えしています。

どちらも、紅型を「特別なもの」にするためではなく、
今を生きる私たちの暮らしと、
静かにつながる存在として感じていただくためのものです。

この場所を訪れてくださったことが、
紅型との、ささやかな出会いとなれば幸いです。

LINE公式 https://line.me/R/ti/p/@275zrjgg

Instagram https://www.instagram.co