首里の夕べ【イベント】
2026.06.17
人が集まるということ
皆さん、こんにちは。
いつも城間びんがた工房、そして紅型を通して琉球文化に関心を寄せていただき、本当にありがとうございます。
7月18日に予定している「紅型と落語」の会ですが、おかげさまで少しずつご予約をいただいております。
本当にありがとうございます。
現在、私のパートナーであり、「杜栄」の代表でもある城間あずきと共に準備を進めています。
定員30名の小さな会ですが、すでに半数近くの方にお申し込みいただいており、ありがたい気持ちでいっぱいです。
こうしたイベントは、毎回少し緊張します。
本当に人が来てくれるだろうか。
楽しんでいただけるだろうか。
私たちにできることは何だろうか。
そんなことを考えながら準備を進めています。
前回開催した落語会も同じでした。
始まる前は不安もありましたが、結果的には地域の方々を中心に、さまざまな方が足を運んでくださいました。
その中で私自身が驚いたことがあります。
それは、落語が好きで来られた方の中には、紅型や伝統工芸についてほとんど知らない方も多かったということです。
逆に言えば、紅型を見に来たわけではない方々が、この場所に来てくださったということでもあります。
それが私にはとても新鮮でした。
私たちは普段、紅型という仕事をしています。
しかし、考えてみると紅型は昔から誰もが身近に触れてきた文化というわけではありません。
琉球王国時代には王族や士族の衣装として発展し、長い間、限られた人々のために作られてきた歴史があります。
そのため、沖縄の伝統工芸と聞くと親しみやすい印象を持たれるかもしれませんが、本格的な紅型に触れる機会は実はそれほど多くありません。
現在でも、高度な技術を用いて制作される手仕事の紅型は生産量が限られています。
そのため、多くの方にとっては「名前は知っているけれど、実際には見たことがない」という存在かもしれません。
私自身、首里という場所で仕事を続けながら、どこか心細さを感じることもありました。
文化を伝えることの難しさ。
知ってもらうことの難しさ。
その一方で、作ることに集中したいという思い。
その両方の間で揺れながら仕事をしてきたように思います。
そんな中で、落語会のようなイベントは思いがけない出会いを運んできてくれます。
近所の方が来てくださる。
仕事を通じて知り合った方が足を運んでくださる。
「城間さんって、こんな仕事をしていたんだね。」
そんな言葉をかけてもらうことがあります。
私たちにとっては当たり前の日常でも、初めて見る方にとっては新しい発見なのかもしれません。
そのことに、少しずつ手応えを感じるようになりました。
文化を伝えるというと、つい大きなことを考えてしまいます。
けれど実際には、一人の人に知ってもらうことから始まるのかもしれません。
一人が興味を持つ。
その人がまた誰かに話す。
そうして少しずつ広がっていく。
文化というものは、案外そういう形で育っていくのではないかと思うのです。
今回の落語会も、単に落語を楽しむだけの時間ではありません。
もちろん落語そのものを楽しんでいただきたいと思っています。
しかしそれと同時に、人と人が出会う場であってほしいとも思っています。
年齢も仕事も違う人たちが、同じ場所で同じ時間を過ごす。
その中で会話が生まれたり、新しいつながりが生まれたりする。
そういったことが、とても豊かなことのように感じています。
沖縄は昔から、人が行き交う場所でした。
さまざまな文化が行き交い、人が出会い、新しいものが生まれてきました。
その流れの中で紅型も育まれてきたのだと思います。
だからこそ、私は文化を作品だけで残そうとは思っていません。
作品も大切です。
技術も大切です。
けれど、それと同じくらい大切なのが、人が集まることだと思っています。
誰かがこの場所を訪れる。
誰かがここで話をする。
誰かが新しい発見を持ち帰る。
そうした積み重ねが、文化を次の世代へ運んでいくのではないでしょうか。
今回の落語会も、きっとそんな時間になるのだと思います。
どんな方々とお会いできるのか。
どんな会話が生まれるのか。
今からとても楽しみにしています。
そして何より、このような機会を支えてくださる皆さまに心から感謝しています。
7月18日、多くの方とお会いできることを楽しみにしております。






城間栄市プロフィール
紅型に、時間と祈りを宿す
私は紅型を、単なる染色技法ではなく、
沖縄という土地で積み重ねられてきた時間や祈り、
そして暮らしの感覚を受け止める「文化の器」だと捉えています。
布に色を置くという行為の奥には、
自然へのまなざし、人への想い、
そして生き方そのものが静かに重なっています。
その感覚を、できるだけ正直に、今の時代の言葉と形で手渡していくこと。
それが、私が紅型と向き合い続ける理由です。

生い立ちと紅型との距離
1977年、沖縄県生まれ。
城間びんがた工房十五代・城間栄順の長男として育ちました。
幼い頃から、工房は日常の延長線上にありました。
染料の匂い、布を干す風景、
職人たちの背中や交わされる何気ない会話。
それらは特別なものというより、生活の一部として、自然に身の回りにありました。
本格的に工房に入り、父のもとで修行を始めたのは、
沖縄県芸術祭「沖展」への初入選をきっかけとしています。
紅型を「受け継ぐもの」としてではなく、
自分自身の人生として引き受ける覚悟が、
そのとき初めて定まったように思います。
外の世界で学んだこと
2003年からの約2年間、
インドネシア・ジョグジャカルタに滞在し、
バティック(ろうけつ染)を学びました。
異なる気候、異なる宗教観、異なる生活のリズム。
その中で工芸がどのように根づき、人々の暮らしと結びついているのかを、
現地での生活を通して体感しました。
この経験は、
「伝統を守ること」と「変化を受け入れること」は、
決して相反するものではない、
という確信を私にもたらしました。
受賞・出展についての考え方
これまで、沖展、日本工芸会、西部伝統工芸展、
MOA美術館岡田茂吉賞など、
いくつかの評価や賞をいただいてきました。
また、文化庁主催の展覧会や、
「ポケモン工芸展」など、国内外に向けた企画展にも参加する機会を得ています。
こうした節目を迎えるたびに、
私自身の評価以上に、
紅型という存在を知ってもらう機会が広がっていくことに、
大きな喜びを感じています。
一つの作品が、
「沖縄にはこういう染め物があるのですね」
という小さな気づきにつながる。
その積み重ねこそが、紅型の未来を静かに支えていくのだと感じています。
制作について
制作では、伝統的な技法を大切にしながらも、
その時代、その感覚にしか生まれない表現を探り続けています。
代表作の一つである紅型着物《波の歌》では、
沖縄の海を泳ぐ生き物たちの姿を、
藍色を基調に、リズムと奥行きを意識して表現しました。
新しさを声高に主張するのではなく、
布に触れた人が、
どこか懐かしさや安心感を覚えるような仕事を目指しています。
今、そしてこれから
現在は、
城間びんがた工房十六代代表として制作を行いながら、
日本工芸会正会員、沖展染色部門審査員、
沖縄県立芸術大学非常勤講師としても活動しています。
これらの役割もまた、
紅型を「閉じた世界」に留めず、
次の世代や、まだ出会っていない人たちへと
静かにつないでいくための一つの手段だと考えています。
これからも、
展覧会やさまざまな協働を通して、
紅型という文化に触れる“入り口”を、少しずつ増やしていきたい。
それは広げるためというより、
必要な場所に、必要なかたちで、そっと灯りを置いていく
そんな感覚に近いものです。
おわりに
公式ホームページでは、
紅型の歴史や背景、制作に込めた考えを、
少し丁寧に言葉にして残しています。
Instagramでは、
職人の日常や工房の空気、
沖縄の光や緑の中で息づく紅型の表情を、
より身近な距離感でお伝えしています。
どちらも、紅型を「特別なもの」にするためではなく、
今を生きる私たちの暮らしと、
静かにつながる存在として感じていただくためのものです。
この場所を訪れてくださったことが、
紅型との、ささやかな出会いとなれば幸いです。

LINE公式 https://line.me/R/ti/p/@275zrjgg
