紅型に宿る沖縄の心と歴史的背景
2024.11.15
おはようございます。本日もブログをご覧いただき、ありがとうございます!
現在、沖縄では非常に珍しいことに、4つもの台風が同時に発生しています。47年生きてきて初めての経験で、驚いています。湿気を含んだ南風も吹き込み、しばらく天気が不安定になりそうです。
さて、今日は月末に開催予定のイベントについてお知らせします。11月29日(金)と30日(土)に「祝いの布」をテーマにした展示と小さな飾り額やさまざまな小物も販売予定です。それぞれのアイテムには「祝いの布」というテーマにちなんだ背景や物語が込められていますので、ぜひその由来もお楽しみいただければと思います。
もともと紅型は琉球王国時代に発展した伝統工芸で、日本や中国の吉祥文様を取り入れ、独自のデザインが形成されてきました。近年では沖縄らしさを象徴する海や植物のモチーフも多く取り入れられています。実際、琉球王国の時代には、紅型のデザインには他国の文様が多く用いられており、外交的な意味や他文化への敬意を示す意図があったのかもしれません。また、当時の紅型の図案には沖縄独自の動植物が少なく、紅型があくまで他国のデザインに依拠していたのも興味深い点です。
こうした歴史的背景を持つ紅型ですが、近年では沖縄の海や花、植物などが多くデザインに用いられるようになりました。琉球王国時代、工芸品には厳格なルールがあり、自由なデザインは許されなかったとされますが、それも紅型の歴史の一部です。
今回の展示では、こうした紅型のデザインの変遷やエピソードを写真とともにわかりやすくご紹介します。ぜひ、各柄に込められた物語を感じていただけたら嬉しいです。

紅型に、時間と祈りを宿す
私は紅型を、単なる染色技法ではなく、
沖縄という土地で積み重ねられてきた時間や祈り、
そして暮らしの感覚を受け止める「文化の器」だと捉えています。
布に色を置くという行為の奥には、
自然へのまなざし、人への想い、
そして生き方そのものが静かに重なっています。
その感覚を、できるだけ正直に、今の時代の言葉と形で手渡していくこと。
それが、私が紅型と向き合い続ける理由です。

生い立ちと紅型との距離
1977年、沖縄県生まれ。
城間びんがた工房十五代・城間栄順の長男として育ちました。
幼い頃から、工房は日常の延長線上にありました。
染料の匂い、布を干す風景、
職人たちの背中や交わされる何気ない会話。
それらは特別なものというより、生活の一部として、自然に身の回りにありました。
本格的に工房に入り、父のもとで修行を始めたのは、
沖縄県芸術祭「沖展」への初入選をきっかけとしています。
紅型を「受け継ぐもの」としてではなく、
自分自身の人生として引き受ける覚悟が、
そのとき初めて定まったように思います。
外の世界で学んだこと
2003年からの約2年間、
インドネシア・ジョグジャカルタに滞在し、
バティック(ろうけつ染)を学びました。
異なる気候、異なる宗教観、異なる生活のリズム。
その中で工芸がどのように根づき、人々の暮らしと結びついているのかを、
現地での生活を通して体感しました。
この経験は、
「伝統を守ること」と「変化を受け入れること」は、
決して相反するものではない、
という確信を私にもたらしました。
受賞・出展についての考え方
これまで、沖展、日本工芸会、西部伝統工芸展、
MOA美術館岡田茂吉賞など、
いくつかの評価や賞をいただいてきました。
また、文化庁主催の展覧会や、
「ポケモン工芸展」など、国内外に向けた企画展にも参加する機会を得ています。
こうした節目を迎えるたびに、
私自身の評価以上に、
紅型という存在を知ってもらう機会が広がっていくことに、
大きな喜びを感じています。
一つの作品が、
「沖縄にはこういう染め物があるのですね」
という小さな気づきにつながる。
その積み重ねこそが、紅型の未来を静かに支えていくのだと感じています。
制作について
制作では、伝統的な技法を大切にしながらも、
その時代、その感覚にしか生まれない表現を探り続けています。
代表作の一つである紅型着物《波の歌》では、
沖縄の海を泳ぐ生き物たちの姿を、
藍色を基調に、リズムと奥行きを意識して表現しました。
新しさを声高に主張するのではなく、
布に触れた人が、
どこか懐かしさや安心感を覚えるような仕事を目指しています。
今、そしてこれから
現在は、
城間びんがた工房十六代代表として制作を行いながら、
日本工芸会正会員、沖展染色部門審査員、
沖縄県立芸術大学非常勤講師としても活動しています。
これらの役割もまた、
紅型を「閉じた世界」に留めず、
次の世代や、まだ出会っていない人たちへと
静かにつないでいくための一つの手段だと考えています。
これからも、
展覧会やさまざまな協働を通して、
紅型という文化に触れる“入り口”を、少しずつ増やしていきたい。
それは広げるためというより、
必要な場所に、必要なかたちで、そっと灯りを置いていく
そんな感覚に近いものです。
おわりに
公式ホームページでは、
紅型の歴史や背景、制作に込めた考えを、
少し丁寧に言葉にして残しています。
Instagramでは、
職人の日常や工房の空気、
沖縄の光や緑の中で息づく紅型の表情を、
より身近な距離感でお伝えしています。
どちらも、紅型を「特別なもの」にするためではなく、
今を生きる私たちの暮らしと、
静かにつながる存在として感じていただくためのものです。
この場所を訪れてくださったことが、
紅型との、ささやかな出会いとなれば幸いです。

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