あなたと紅型を繋いだ90分の特別な時間

おはようございます!

本日もこのブログをご覧いただき、心より感謝申し上げます。青空が広がる爽やかな朝、沖縄にも北風が吹き、少し肌寒さを感じる季節となりました。現在の気温は朝9時で17度。沖縄にとっては冬の入り口といったところでしょうか。

さて、昨日をもちまして、二日間にわたるイベント「祝いの布展」が無事に終了いたしました。この場をお借りして、改めて感謝の気持ちをお伝えいたします。午前・午後ともに定員15名の枠が満席となり、多くの方々にご参加いただけたことは本当にありがたく、運営者一同感動しております。

イベントの内容

今回のイベントは、ものづくりの現場を感じていただくことを目的に、90分のプログラムを構成しました。

  • 30分間の工房見学
    職人たちがどのように紅型を制作しているのかを間近でご覧いただきました。手元の作業や道具の扱い方など、普段なかなか目にすることのない工程を体感いただけたのではないかと思います。
  • 30分間の琉球舞踊鑑賞
    琉球の美しい衣装とともに、その動きや音楽が紡ぐ物語を楽しんでいただきました。紅型がどのように舞踊の衣装として活かされてきたのか、伝統芸能の中で生きる紅型の魅力をお伝えできたと思います。
  • ギャラリーでの解説と鑑賞
    最後にギャラリースペースにて、紅型作品をご覧いただきました。一点一点に込められた物語や工夫について解説しながら、じっくりと作品を感じていただけた時間だったかと思います。

感じたこと、次への課題

イベント全体を振り返りながら、私たち自身も多くの学びを得ました。琉球王朝時代から続く紅型という手仕事は、時代ごとの大きな変化に向き合いながら、その価値を模索し続けてきました。

  • 琉球処分:琉球王国が廃され日本に編入された時代。
  • 戦後復興:祖父の時代には、戦争で全てを失い、ゼロから工房を立て直しました。
  • 本土復帰:アメリカ統治から日本へ戻ったタイミングで、父は紅型を和服の世界に広げる挑戦を始めました。

それぞれの時代に突きつけられる課題を乗り越えながらも、100年以上変わらない制作工程を守り続けてきた紅型。その伝統と革新のバランスをどう保ち続けるのか――今回のイベントを通じて、多くのことを考えさせられる貴重な時間となりました。

ご参加いただいた皆様への感謝

特に今回、前回の6月に初めて行ったイベントとは違い、より親近感のある形で開催できたように思います。不特定多数の方々に向けてではなく、紅型に興味を持ってくださる方々に直接お声がけし、ご参加いただいたことで、濃密なコミュニケーションの場が生まれました。多くの情報をお伝えする中で、皆様が熱心に聞き入ってくださる姿に励まされました。

運営チームとしても、大きな経験と学びを得られる機会となり、これからの活動へのエネルギーをいただいた気持ちです。本当にありがとうございました。

次回に向けて、さらに内容を深めつつ、紅型の魅力をお伝えできるよう準備してまいります。引き続き、城間びんがた工房をどうぞよろしくお願いいたします。


感謝を込めて

城間びんがた工房一同

公式ホームページでは、紅型の歴史や伝統、私自身の制作にかける思いなどを、やや丁寧に、文化的な視点も交えながら発信しています。一方でInstagramでは、職人の日常や工房のちょっとした風景、沖縄の光や緑の中に息づく“暮らしに根ざした紅型”の表情を気軽に紹介しています。たとえば、朝の染料作りの様子や、工房の裏庭で揺れる福木の葉っぱ、時には染めたての布を空にかざした一瞬の写真など、ものづくりの空気感を身近に感じていただける内容を心がけています。

紅型は決して遠い伝統ではなく、今を生きる私たちの日々とともにあるものです。これからも新しい挑戦と日々の積み重ねを大切にしながら、沖縄の染め物文化の魅力を発信し続けていきたいと思います。ぜひInstagramものぞいていただき、工房の日常や沖縄の彩りを一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。

城間栄市 プロフィール昭和52年(1977年)、沖縄県生まれ。

城間びんがた工房十五代・城間栄順の長男として育つ。

学歴・海外研修

  • 平成15年(2003年)より2年間、インドネシア・ジョグジャカルタ特別州に滞在し、バティック(ろうけつ染)を学ぶ。
  • 帰国後は城間びんがた工房にて、琉球びんがたの制作・指導に専念。

受賞・展覧会歴

  • 平成24年:西部工芸展 福岡市長賞 受賞
  • 平成25年:沖展 正会員に推挙
  • 平成26年:西部工芸展 奨励賞 受賞
  • 平成27年:日本工芸会 新人賞を受賞し、正会員に推挙
  • 令和3年:西部工芸展 沖縄タイムス社賞 受賞
  • 令和4年:MOA美術館 岡田茂吉賞 大賞 受賞
  • 令和5年:西部工芸展 西部支部長賞 受賞

主な出展

  • 「ポケモン工芸展」に出展
  • 文化庁主催「日中韓芸術祭」に出展
  • 令和6年:文化庁「技を極める」展に出展

現在の役職・活動

  • 城間びんがた工房 十六代 代表
  • 日本工芸会 正会員
  • 沖展(沖縄タイムス社主催公募展)染色部門 審査員
  • 沖縄県立芸術大学 非常勤講師

プロフィール概要

はじめまして。城間びんがた工房16代目の城間栄市です。私は1977年、十五代・城間栄順の長男として沖縄に生まれ、幼いころから紅型の仕事に親しみながら育ちました。工房に入った後は父のもとで修行を重ねつつ、沖縄県芸術祭「沖展」に初入選したことをきっかけに本格的に紅型作家として歩み始めました。

これまでの道のりの中で、沖展賞や日本工芸会の新人賞、西部伝統工芸展での沖縄タイムス社賞・西部支部長賞、そしてMOA美術館の岡田茂吉賞大賞など、さまざまな賞をいただくことができました。また、沖展の正会員や日本工芸会の正会員として活動しながら、審査員として後進の作品にも向き合う立場も経験しています。

私自身の制作で特に印象に残っているのは、「波の歌」という紅型着物の作品です。これは沖縄の海を泳ぐ生き物たちの姿を、藍型を基調とした布に躍動感をもって表現したものです。伝統の技法を守りつつ、そこに自分なりの視点や工夫を重ねることで、新しい紅型の可能性を切り拓きたいという思いが込められています。こうした活動を通して、紅型が沖縄の誇る伝統工芸であるだけでなく、日本、そして世界に発信できるアートであると感じています。

20代の頃にはアジア各地を巡り、2003年から2年間はインドネシア・ジョグジャカルタでバティック(ろうけつ染)を学びました。現地での生活や工芸の現場を通して、異文化の技術や感性にふれ、自分自身の紅型への向き合い方にも大きな影響を受けました。伝統を守るだけでなく、常に新しい刺激や発見を大切にしています。

最近では、「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」など、世界を巡回する企画展にも参加する機会が増えてきました。紅型の技法でポケモンを表現するというチャレンジは、私自身にとっても大きな刺激となりましたし、沖縄の紅型が海外のお客様にも響く可能性を感じています。

メディアにも多く取り上げていただくようになりました。テレビや新聞、ウェブメディアで工房の日常や制作現場が紹介されるたびに、「300年前と変わらない手仕事」に込めた想いを、多くの方に伝えたいと強く思います。