「紅型コラム、50歩目の節目――“身内話”から“一歩先”へ」
2025.05.08
こんにちは。昨年から始めた公式ホームページのコラム〈お知らせ〉は、きょうで 50 本目 の投稿となりました。いつもご覧くださる皆さまに、心より感謝申し上げます。

城間びんがた工房は、琉球王国時代から三百年続く紅型(びんがた)の系譜を受け継ぎ、ここ首里の地で染め物に向き合ってまいりました。私はその 16 代目にあたります。沖縄にはこうした伝統工芸が息づいていることを、もっと多くの方に知っていただきたい――それがコラムを続ける大きな理由です。
これまでの 50 本はどちらかと言えば “身内向け” の内容でした。父や祖父、私自身のエピソードなど、パーソナルな話題を多く綴ってきたと思います。今後は制作工程や作品そのもの、使う材料のことなどにも焦点を当て、紅型を初めて知る方にも楽しんでいただける内容に広げていきたいと考えています。
そもそも紅型は、王族や士族だけが身にまとうことを許された格式高い染物で、かつては限られた家系の男性職人のみが技を守っていました。戦後、38 歳で被災した祖父は「このままでは途絶えてしまう」と門戸を開き、女性職人も育成。こうして今日まで受け継がれてきた歴史を思うと、紅型がいかに大切に守られてきた文化かを痛感します。
一方で、工房では今も「ものづくりに集中できる環境」を最優先しており、日常的な見学はお受けしておりません。だからこそ、Instagram や公式サイトを通じて手仕事の魅力をお伝えすることは、私たちにとって切実な願いでもあります。
次は 100 本、そして 300 本を目指して――。紅型の息づかいを皆さまに届け続けてまいります。いつも温かい関心を寄せてくださり、本当にありがとうございます。皆さまの工芸への好奇心こそが、私たちの挑戦を支える原動力です。








城間栄市 プロフィール昭和52年(1977年)、沖縄県生まれ。
城間びんがた工房十五代・城間栄順の長男として育つ。
学歴・海外研修
- 平成15年(2003年)より2年間、インドネシア・ジョグジャカルタ特別州に滞在し、バティック(ろうけつ染)を学ぶ。
- 帰国後は城間びんがた工房にて、琉球びんがたの制作・指導に専念。
受賞・展覧会歴
- 平成24年:西部工芸展 福岡市長賞 受賞
- 平成25年:沖展 正会員に推挙
- 平成26年:西部工芸展 奨励賞 受賞
- 平成27年:日本工芸会 新人賞を受賞し、正会員に推挙
- 令和3年:西部工芸展 沖縄タイムス社賞 受賞
- 令和4年:MOA美術館 岡田茂吉賞 大賞 受賞
- 令和5年:西部工芸展 西部支部長賞 受賞
主な出展
- 「ポケモン工芸展」に出展
- 文化庁主催「日中韓芸術祭」に出展
- 令和6年:文化庁「技を極める」展に出展
現在の役職・活動
- 城間びんがた工房 十六代 代表
- 日本工芸会 正会員
- 沖展(沖縄タイムス社主催公募展)染色部門 審査員
- 沖縄県立芸術大学 非常勤講師
- 沖縄大学 非常勤講師
プロフィール概要
城間 栄市(しろま・えいいち)は、昭和52年(1977年)生まれの琉球びんがた作家・城間びんがた工房代表 十五代・城間栄順の長男として、幼少期より琉球びんがたに親しむ。平成15年(2003年)から2年間インドネシアに滞在し、バティック(ろうけつ染)の技法を学んだ後、沖縄に帰国。以来、伝統的なびんがた技法を継承しつつ、海外での経験を活かした独自の表現を追求している。
数々の受賞歴を持ち、日本工芸会正会員・沖展染色部門審査員など、多方面で活躍。文化庁やMOA美術館主催の展覧会にも出展を重ね、琉球びんがたの魅力を国内外に発信している。現在は城間びんがた工房十六代の代表として制作・指導にあたりながら、沖縄県立芸術大学の非常勤講師として後進の育成にも尽力。