― 伝統が息づく場所 ―
2025.10.23
― 琉球の心を染める ―
ものづくりに、静かに惚れこめる人へ
こんにちは。
城間びんがた工房 十六代目、城間栄市です。
私たちは、琉球王朝の時代から続く紅型(びんがた)の工房として、約三百年の歴史を紡いできました。
紅型は、沖縄の自然、祈り、そして人々の暮らしの中から生まれた染め物です。
その文様には、南国の光や風、そしてこの島に生きてきた人々の心が宿っています。
琉球から日本へ、そして未来へ
琉球はかつて、アジアの交易の中心にありました。
日本、中国、東南アジア――さまざまな文化が行き交う中で、
互いの違いを受け入れながら、独自の美意識を育んできた場所です。
その懐の深さこそ、琉球文化の魅力。
紅型もまた、そうした「多様な文化を受け止める心」から生まれた工芸です。
私たちの家は、王族の衣装を染める工房として発展してきました。
良い材料を惜しみなく使い、手間を惜しまない――
それが、紅型に込められた“琉球の誇り”であり、職人としての矜持でもありました。
しかし、祖父の時代。
太平洋戦争の戦火ですべての道具や型紙が焼失しました。
それでも、多くの人々の助けを受けて、私たちの家は再び立ち上がりました。
そして本土復帰の時代、父は新しい挑戦を始めました。
「琉球から日本へ」――紅型を着物の世界へと広げ、より多くの人に届けようとしたのです。
受け継ぐだけでなく、問い直す
私が十六代目として工房を継いだのは、十二年前。
そのころからずっと考えてきたのは、
「どうすれば、この伝統を次の世代に確かに手渡せるか」でした。
紅型は華やかな染め物ですが、
その日々の仕事は、静かで、地味で、根気のいるものです。
型を彫り、色を重ね、乾かし、また染める。
その繰り返しの中にしか、“本当の美しさ”は生まれません。
だからこそ、私たちは派手さよりも「静かな集中力」を大切にしています。
小さなズレを直したり、昨日よりわずかに美しく染めようとしたり――
その積み重ねが、紅型の奥行きをつくっていきます。
「好き」から始まる仕事
これまで工房には、求人広告を出したことがありませんでした。
戦後の再興期には、「琉球の文化を残したい」という志のもとに人が集まり、
父の時代には、「紅型をもっと広い世界へ」と挑戦する仲間が集まりました。
けれど今、時代が変わり、人と人とのつながり方も変わってきました。
直接会って、心で通じ合う機会が少なくなった今だからこそ、
改めて“想いを共有できる人”に出会いたいと思っています。
はじめての「職人募集」に向けて
現在、工房として初めて、正式に求人広告を出す準備を進めています。
これまではご縁と口コミで人が集まってきましたが、
これからはもう少し広く「ものづくりに惹かれる人」に届く形を整えたいと思っています。
紅型の仕事は、決して派手ではありません。
日々の繰り返しの中で、小さな達成を重ねていく仕事です。
けれどその積み重ねが、確かな技と美を育てていきます。
求人広告の内容や募集開始の時期など、具体的な情報は、
今後このホームページでもお知らせしていく予定です。
どうぞ楽しみにお待ちください。
これからも、琉球の思いを染めながら
伝統は、守るだけでは続きません。
問い直し、工夫し、時代に合わせて“変わり続ける”ことが大切です。
紅型は、琉球の風土とともに生きてきました。
だからこそ、これからも“人とともに進化していく”工芸でありたい。
ものづくりを通して琉球の心を守り、未来へつなげる。
その挑戦を、これからも一歩ずつ続けていきます。
いつも応援してくださっている皆さまに、心より感謝申し上げます。
そして、新しいご縁がここから生まれることを、楽しみにしています。
城間びんがた工房 十六代目 城間 栄市






LINE公式 https://line.me/R/ti/p/@275zrjgg

Instagram https://www.instagram.com/shiromabingata16/
公式ホームページでは、紅型の歴史や伝統、私自身の制作にかける思いなどを、やや丁寧に、文化的な視点も交えながら発信しています。一方でInstagramでは、職人の日常や工房のちょっとした風景、沖縄の光や緑の中に息づく“暮らしに根ざした紅型”の表情を気軽に紹介しています。たとえば、朝の染料作りの様子や、工房の裏庭で揺れる福木の葉っぱ、時には染めたての布を空にかざした一瞬の写真など、ものづくりの空気感を身近に感じていただける内容を心がけています。
紅型は決して遠い伝統ではなく、今を生きる私たちの日々とともにあるものです。これからも新しい挑戦と日々の積み重ねを大切にしながら、沖縄の染め物文化の魅力を発信し続けていきたいと思います。ぜひInstagramものぞいていただき、工房の日常や沖縄の彩りを一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。

城間栄市 プロフィール昭和52年(1977年)、沖縄県生まれ。
城間びんがた工房十五代・城間栄順の長男として育つ。
学歴・海外研修
- 平成15年(2003年)より2年間、インドネシア・ジョグジャカルタ特別州に滞在し、バティック(ろうけつ染)を学ぶ。
- 帰国後は城間びんがた工房にて、琉球びんがたの制作・指導に専念。
受賞・展覧会歴
- 平成24年:西部工芸展 福岡市長賞 受賞
- 平成25年:沖展 正会員に推挙
- 平成26年:西部工芸展 奨励賞 受賞
- 平成27年:日本工芸会 新人賞を受賞し、正会員に推挙
- 令和3年:西部工芸展 沖縄タイムス社賞 受賞
- 令和4年:MOA美術館 岡田茂吉賞 大賞 受賞
- 令和5年:西部工芸展 西部支部長賞 受賞
主な出展
- 「ポケモン工芸展」に出展
- 文化庁主催「日中韓芸術祭」に出展
- 令和6年:文化庁「技を極める」展に出展
現在の役職・活動
- 城間びんがた工房 十六代 代表
- 日本工芸会 正会員
- 沖展(沖縄タイムス社主催公募展)染色部門 審査員
- 沖縄県立芸術大学 非常勤講師
プロフィール概要
はじめまして。城間びんがた工房16代目の城間栄市です。私は1977年、十五代・城間栄順の長男として沖縄に生まれ、幼いころから紅型の仕事に親しみながら育ちました。工房に入った後は父のもとで修行を重ねつつ、沖縄県芸術祭「沖展」に初入選したことをきっかけに本格的に紅型作家として歩み始めました。
これまでの道のりの中で、沖展賞や日本工芸会の新人賞、西部伝統工芸展での沖縄タイムス社賞・西部支部長賞、そしてMOA美術館の岡田茂吉賞大賞など、さまざまな賞をいただくことができました。また、沖展の正会員や日本工芸会の正会員として活動しながら、審査員として後進の作品にも向き合う立場も経験しています。
私自身の制作で特に印象に残っているのは、「波の歌」という紅型着物の作品です。これは沖縄の海を泳ぐ生き物たちの姿を、藍型を基調とした布に躍動感をもって表現したものです。伝統の技法を守りつつ、そこに自分なりの視点や工夫を重ねることで、新しい紅型の可能性を切り拓きたいという思いが込められています。こうした活動を通して、紅型が沖縄の誇る伝統工芸であるだけでなく、日本、そして世界に発信できるアートであると感じています。
20代の頃にはアジア各地を巡り、2003年から2年間はインドネシア・ジョグジャカルタでバティック(ろうけつ染)を学びました。現地での生活や工芸の現場を通して、異文化の技術や感性にふれ、自分自身の紅型への向き合い方にも大きな影響を受けました。伝統を守るだけでなく、常に新しい刺激や発見を大切にしています。
最近では、「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」など、世界を巡回する企画展にも参加する機会が増えてきました。紅型の技法でポケモンを表現するというチャレンジは、私自身にとっても大きな刺激となりましたし、沖縄の紅型が海外のお客様にも響く可能性を感じています。
メディアにも多く取り上げていただくようになりました。テレビや新聞、ウェブメディアで工房の日常や制作現場が紹介されるたびに、「300年前と変わらない手仕事」に込めた想いを、多くの方に伝えたいと強く思います。