島々の色彩 ― 琉球の富を探る【イベント】
2025.09.18
琉球文化を紡ぐ ― 紅型とともに歩む時間
皆さま、いつも城間びんがた工房をご支援いただき、誠にありがとうございます。
日々、工房で紅型の仕事に没頭できるのも、私たちの挑戦に関心を寄せ、応援してくださる皆さまの存在があるからこそです。紅型を通して琉球文化を未来へと手渡していくことは、私にとって使命であり、同時に大きな喜びでもあります。
こうして日常の仕事に打ち込む中で、時折訪れる出会いやご縁が、私たちの活動に新たな刺激と広がりを与えてくれます。その一つが、今回ご案内している文化イベント「琉球の富を探る」です。
紅型とともに続いてきた工房の歩み
私は、沖縄で伝統工芸「びんがた」を受け継いでいる城間びんがた工房16代目の城間栄市と申します。
びんがたは琉球王国時代、王族や士族の衣装を彩るために生まれた染物であり、鮮やかな色彩と精緻な図案で知られています。
戦後、焦土と化した沖縄で祖父・栄喜が工房を再興し、その後父・栄順へと技と心が受け継がれました。私はその系譜の16代目として、日々びんがたに向き合っています。
びんがたの仕事はただ技術を守ることにとどまらず、「今の時代にどう生きるか」を問いかけ続ける営みです。文化は受け継がれるだけでなく、その時代の人々の生活と感性に響いて初めて力を持ちます。
だからこそ、私たちは日常の制作と並行して、文化的な発信やイベントを通じて「生きている工芸品」としてのびんがたを紹介してきました。
今回のイベントについて
今回の取り組みは、お茶の先生・北島宗利先生が沖縄を訪れ、「琉球の富を探る」というテーマを掲げられたことをきっかけに始まりました。
沖縄の伝統を「紅型」という工芸だけでなく、舞踊や音楽、茶の湯とともに体験していただく――そんな多角的な文化交流の場を設けようと企画されたのです。
開催は二か所。
- 沖縄会場:9月23日
- 東京会場:9月27日
内容は大変充実しています。
琉球舞踊家で真踊流家元の真境名由佳子さんに舞を披露していただき、よなは徹さんに演奏をお願いしています。そして北島先生にはお茶のお手前をいただき、私はびんがたの工芸的側面についてお話をさせていただく予定です。
舞・音楽・茶・工芸――これらが一堂に会することで、琉球文化の奥深さと多彩さを五感で味わっていただけることと思います。
進捗と反響
おかげさまで、沖縄会場(9月23日)はすでに満席となりました。たくさんの方々が紅型や琉球文化に関心を寄せ、参加を希望してくださったことに、心から感謝しています。
東京会場(9月27日)についても、多くのお申し込みをいただいており、午前の部に若干の空席が残るのみとなっています。これほど多くの方々に興味を持っていただけたことは、私自身にとっても大きな励みであり、このイベントそのものがすでに「意義ある出会い」になっていると感じています。
現在、制作の合間を縫って、会場となるギャラリーの準備を一つひとつ進めています。
イベントがもたらすもの
工房では年間に数回、こうした文化的イベントを行っています。そのたびに思うのは、作品をただ作って終わりではなく、人と人が触れ合う場に持ち込むことで、初めて工芸が「生きている」と実感できるということです。
紅型は過去から受け継がれた伝統であると同時に、今を生きる人々の暮らしに新しい意味をもたらす表現でもあります。舞踊や音楽、茶の湯と交わることで、その魅力はより豊かに広がり、私自身もまた多くを学ばせていただいています。
また、こうした場は、日々工房で黙々と制作に向き合っている私にとっても新しい刺激であり、次の挑戦への原動力になります。参加してくださる方々が紅型に触れ、そこから何を感じ、どのようにご自身の生活に取り入れてくださるのか――その反応こそが、未来へのヒントとなります。
最後に
本日は9月18日。沖縄でのイベントまで残り5日となりました。
この日を迎えられるのも、多くの方の支えと、関心を寄せてくださる皆さまのおかげです。
「琉球の富を探る」というテーマのもと、舞・音楽・茶・工芸が出会う特別な時間。そこに集う方々とともに、沖縄の文化がこれからどのように伝わり、広がっていくのかを共有できればと願っています。
どうぞ当日、会場でお会いできることを楽しみにしています。
城間栄市








城間栄市プロフィール
紅型に、時間と祈りを宿す
私は紅型を、単なる染色技法ではなく、
沖縄という土地で積み重ねられてきた時間や祈り、
そして暮らしの感覚を受け止める「文化の器」だと捉えています。
布に色を置くという行為の奥には、
自然へのまなざし、人への想い、
そして生き方そのものが静かに重なっています。
その感覚を、できるだけ正直に、今の時代の言葉と形で手渡していくこと。
それが、私が紅型と向き合い続ける理由です。

生い立ちと紅型との距離
1977年、沖縄県生まれ。
城間びんがた工房十五代・城間栄順の長男として育ちました。
幼い頃から、工房は日常の延長線上にありました。
染料の匂い、布を干す風景、
職人たちの背中や交わされる何気ない会話。
それらは特別なものというより、生活の一部として、自然に身の回りにありました。
本格的に工房に入り、父のもとで修行を始めたのは、
沖縄県芸術祭「沖展」への初入選をきっかけとしています。
紅型を「受け継ぐもの」としてではなく、
自分自身の人生として引き受ける覚悟が、
そのとき初めて定まったように思います。
外の世界で学んだこと
2003年からの約2年間、
インドネシア・ジョグジャカルタに滞在し、
バティック(ろうけつ染)を学びました。
異なる気候、異なる宗教観、異なる生活のリズム。
その中で工芸がどのように根づき、人々の暮らしと結びついているのかを、
現地での生活を通して体感しました。
この経験は、
「伝統を守ること」と「変化を受け入れること」は、
決して相反するものではない、
という確信を私にもたらしました。
受賞・出展についての考え方
これまで、沖展、日本工芸会、西部伝統工芸展、
MOA美術館岡田茂吉賞など、
いくつかの評価や賞をいただいてきました。
また、文化庁主催の展覧会や、
「ポケモン工芸展」など、国内外に向けた企画展にも参加する機会を得ています。
こうした節目を迎えるたびに、
私自身の評価以上に、
紅型という存在を知ってもらう機会が広がっていくことに、
大きな喜びを感じています。
一つの作品が、
「沖縄にはこういう染め物があるのですね」
という小さな気づきにつながる。
その積み重ねこそが、紅型の未来を静かに支えていくのだと感じています。
制作について
制作では、伝統的な技法を大切にしながらも、
その時代、その感覚にしか生まれない表現を探り続けています。
代表作の一つである紅型着物《波の歌》では、
沖縄の海を泳ぐ生き物たちの姿を、
藍色を基調に、リズムと奥行きを意識して表現しました。
新しさを声高に主張するのではなく、
布に触れた人が、
どこか懐かしさや安心感を覚えるような仕事を目指しています。
今、そしてこれから
現在は、
城間びんがた工房十六代代表として制作を行いながら、
日本工芸会正会員、沖展染色部門審査員、
沖縄県立芸術大学非常勤講師としても活動しています。
これらの役割もまた、
紅型を「閉じた世界」に留めず、
次の世代や、まだ出会っていない人たちへと
静かにつないでいくための一つの手段だと考えています。
これからも、
展覧会やさまざまな協働を通して、
紅型という文化に触れる“入り口”を、少しずつ増やしていきたい。
それは広げるためというより、
必要な場所に、必要なかたちで、そっと灯りを置いていく
そんな感覚に近いものです。
おわりに
公式ホームページでは、
紅型の歴史や背景、制作に込めた考えを、
少し丁寧に言葉にして残しています。
Instagramでは、
職人の日常や工房の空気、
沖縄の光や緑の中で息づく紅型の表情を、
より身近な距離感でお伝えしています。
どちらも、紅型を「特別なもの」にするためではなく、
今を生きる私たちの暮らしと、
静かにつながる存在として感じていただくためのものです。
この場所を訪れてくださったことが、
紅型との、ささやかな出会いとなれば幸いです。

LINE公式 https://line.me/R/ti/p/@275zrjgg
