島々の色彩 ― 琉球の富を探る: of the Islands: Exploring the Wealth of Ryukyu

琉球文化を紡ぐ ― 紅型とともに歩む時間

皆さま、いつも城間びんがた工房をご支援いただき、誠にありがとうございます。
日々、工房で紅型の仕事に没頭できるのも、私たちの挑戦に関心を寄せ、応援してくださる皆さまの存在があるからこそです。紅型を通して琉球文化を未来へと手渡していくことは、私にとって使命であり、同時に大きな喜びでもあります。

こうして日常の仕事に打ち込む中で、時折訪れる出会いやご縁が、私たちの活動に新たな刺激と広がりを与えてくれます。その一つが、今回ご案内している文化イベント「琉球の富を探る」です。


紅型とともに続いてきた工房の歩み

私は、沖縄で伝統工芸「びんがた」を受け継いでいる城間びんがた工房16代目の城間栄市と申します。
びんがたは琉球王国時代、王族や士族の衣装を彩るために生まれた染物であり、鮮やかな色彩と精緻な図案で知られています。

戦後、焦土と化した沖縄で祖父・栄喜が工房を再興し、その後父・栄順へと技と心が受け継がれました。私はその系譜の16代目として、日々びんがたに向き合っています。
びんがたの仕事はただ技術を守ることにとどまらず、「今の時代にどう生きるか」を問いかけ続ける営みです。文化は受け継がれるだけでなく、その時代の人々の生活と感性に響いて初めて力を持ちます。

だからこそ、私たちは日常の制作と並行して、文化的な発信やイベントを通じて「生きている工芸品」としてのびんがたを紹介してきました。


今回のイベントについて

今回の取り組みは、お茶の先生・北島宗利先生が沖縄を訪れ、「琉球の富を探る」というテーマを掲げられたことをきっかけに始まりました。
沖縄の伝統を「紅型」という工芸だけでなく、舞踊や音楽、茶の湯とともに体験していただく――そんな多角的な文化交流の場を設けようと企画されたのです。

開催は二か所。

  • 沖縄会場:9月23日
  • 東京会場:9月27日

内容は大変充実しています。
琉球舞踊家で真踊流家元の真境名由佳子さんに舞を披露していただき、よなは徹さんに演奏をお願いしています。そして北島先生にはお茶のお手前をいただき、私はびんがたの工芸的側面についてお話をさせていただく予定です。

舞・音楽・茶・工芸――これらが一堂に会することで、琉球文化の奥深さと多彩さを五感で味わっていただけることと思います。


進捗と反響

おかげさまで、沖縄会場(9月23日)はすでに満席となりました。たくさんの方々が紅型や琉球文化に関心を寄せ、参加を希望してくださったことに、心から感謝しています。

東京会場(9月27日)についても、多くのお申し込みをいただいており、午前の部に若干の空席が残るのみとなっています。これほど多くの方々に興味を持っていただけたことは、私自身にとっても大きな励みであり、このイベントそのものがすでに「意義ある出会い」になっていると感じています。

現在、制作の合間を縫って、会場となるギャラリーの準備を一つひとつ進めています。


イベントがもたらすもの

工房では年間に数回、こうした文化的イベントを行っています。そのたびに思うのは、作品をただ作って終わりではなく、人と人が触れ合う場に持ち込むことで、初めて工芸が「生きている」と実感できるということです。

紅型は過去から受け継がれた伝統であると同時に、今を生きる人々の暮らしに新しい意味をもたらす表現でもあります。舞踊や音楽、茶の湯と交わることで、その魅力はより豊かに広がり、私自身もまた多くを学ばせていただいています。

また、こうした場は、日々工房で黙々と制作に向き合っている私にとっても新しい刺激であり、次の挑戦への原動力になります。参加してくださる方々が紅型に触れ、そこから何を感じ、どのようにご自身の生活に取り入れてくださるのか――その反応こそが、未来へのヒントとなります。


最後に

本日は9月18日。沖縄でのイベントまで残り5日となりました。
この日を迎えられるのも、多くの方の支えと、関心を寄せてくださる皆さまのおかげです。

「琉球の富を探る」というテーマのもと、舞・音楽・茶・工芸が出会う特別な時間。そこに集う方々とともに、沖縄の文化がこれからどのように伝わり、広がっていくのかを共有できればと願っています。

どうぞ当日、会場でお会いできることを楽しみにしています。

城間栄市

公式ホームページでは、紅型の歴史や伝統、私自身の制作にかける思いなどを、やや丁寧に、文化的な視点も交えながら発信しています。一方でInstagramでは、職人の日常や工房のちょっとした風景、沖縄の光や緑の中に息づく“暮らしに根ざした紅型”の表情を気軽に紹介しています。たとえば、朝の染料作りの様子や、工房の裏庭で揺れる福木の葉っぱ、時には染めたての布を空にかざした一瞬の写真など、ものづくりの空気感を身近に感じていただける内容を心がけています。

紅型は決して遠い伝統ではなく、今を生きる私たちの日々とともにあるものです。これからも新しい挑戦と日々の積み重ねを大切にしながら、沖縄の染め物文化の魅力を発信し続けていきたいと思います。ぜひInstagramものぞいていただき、工房の日常や沖縄の彩りを一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。

城間栄市 プロフィール昭和52年(1977年)、沖縄県生まれ。

城間びんがた工房十五代・城間栄順の長男として育つ。

学歴・海外研修

  • 平成15年(2003年)より2年間、インドネシア・ジョグジャカルタ特別州に滞在し、バティック(ろうけつ染)を学ぶ。
  • 帰国後は城間びんがた工房にて、琉球びんがたの制作・指導に専念。

受賞・展覧会歴

  • 平成24年:西部工芸展 福岡市長賞 受賞
  • 平成25年:沖展 正会員に推挙
  • 平成26年:西部工芸展 奨励賞 受賞
  • 平成27年:日本工芸会 新人賞を受賞し、正会員に推挙
  • 令和3年:西部工芸展 沖縄タイムス社賞 受賞
  • 令和4年:MOA美術館 岡田茂吉賞 大賞 受賞
  • 令和5年:西部工芸展 西部支部長賞 受賞

主な出展

  • 「ポケモン工芸展」に出展
  • 文化庁主催「日中韓芸術祭」に出展
  • 令和6年:文化庁「技を極める」展に出展

現在の役職・活動

  • 城間びんがた工房 十六代 代表
  • 日本工芸会 正会員
  • 沖展(沖縄タイムス社主催公募展)染色部門 審査員
  • 沖縄県立芸術大学 非常勤講師

プロフィール概要

はじめまして。城間びんがた工房16代目の城間栄市です。私は1977年、十五代・城間栄順の長男として沖縄に生まれ、幼いころから紅型の仕事に親しみながら育ちました。工房に入った後は父のもとで修行を重ねつつ、沖縄県芸術祭「沖展」に初入選したことをきっかけに本格的に紅型作家として歩み始めました。

これまでの道のりの中で、沖展賞や日本工芸会の新人賞、西部伝統工芸展での沖縄タイムス社賞・西部支部長賞、そしてMOA美術館の岡田茂吉賞大賞など、さまざまな賞をいただくことができました。また、沖展の正会員や日本工芸会の正会員として活動しながら、審査員として後進の作品にも向き合う立場も経験しています。

私自身の制作で特に印象に残っているのは、「波の歌」という紅型着物の作品です。これは沖縄の海を泳ぐ生き物たちの姿を、藍型を基調とした布に躍動感をもって表現したものです。伝統の技法を守りつつ、そこに自分なりの視点や工夫を重ねることで、新しい紅型の可能性を切り拓きたいという思いが込められています。こうした活動を通して、紅型が沖縄の誇る伝統工芸であるだけでなく、日本、そして世界に発信できるアートであると感じています。

20代の頃にはアジア各地を巡り、2003年から2年間はインドネシア・ジョグジャカルタでバティック(ろうけつ染)を学びました。現地での生活や工芸の現場を通して、異文化の技術や感性にふれ、自分自身の紅型への向き合い方にも大きな影響を受けました。伝統を守るだけでなく、常に新しい刺激や発見を大切にしています。

最近では、「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」など、世界を巡回する企画展にも参加する機会が増えてきました。紅型の技法でポケモンを表現するというチャレンジは、私自身にとっても大きな刺激となりましたし、沖縄の紅型が海外のお客様にも響く可能性を感じています。

メディアにも多く取り上げていただくようになりました。テレビや新聞、ウェブメディアで工房の日常や制作現場が紹介されるたびに、「300年前と変わらない手仕事」に込めた想いを、多くの方に伝えたいと強く思います。