イベントのお知らせ「紅型✖️落語」2026年1月17日

皆さんこんにちは。
そして、いつも紅型を通して琉球文化の価値を見つめ、応援してくださっている皆さまに、心より感謝申し上げます。

日々、工房の活動を続ける中で、皆さまの好奇心や関心が私自身の大きな支えとなり、ものづくりへ向かう力を与えてくださっています。文化とは、作り手だけでは決して育たず、「受け取ってくれる人」と共に広がっていくものだと、改めて実感する一年になりました。

2025年も終わりが近づいています。
振り返ってみると、今年は私にとって挑戦の多い年でした。
私自身、蛇年ということもあり、ひとつの皮を脱いで次の段階へ進むような、そんな変化を象徴する出来事がいくつも重なりました。

特に、公式ホームページ、Instagram、公式LINEなど、今までにない形での情報発信に取り組むことは、完全な手探りながら、文化をどう現代に伝えていくかを考える良い機会となりました。伝統の「核」を大切にしながら、現代の人々に届きやすい形に整える。その両立は簡単ではありませんが、多くの反応を頂きながら進めてくることができました。

来年も引き続き、今までの積み重ねを大切にしながら、時代に沿った形での発信や交流の場づくりに取り組んでいく所存です。


■祖父が暮らした家を「文化を交わす場」として開く

昨年から、私の祖父・栄喜が平成2年に亡くなるまで暮らしていた家を、ギャラリーとして開放しています。
祖父の住まいは、長年の生活の温度や息遣いがそのまま残る場所であり、そこには時間の積層が静かに宿っています。

その空間で、紅型を軸にした文化イベントをはじめ、さまざまな体験の場を設けるようになりました。

これまでに
・お香の会
・お茶の会
・琉舞の会
など、小規模ながら幅広いテーマでイベントを行い、地域の方々や文化に関心のある方々と交流を重ねてきました。

紅型は布の上に色や文様を染める技術ではありますが、ただの技法ではなく、自然へのまなざしや祈り、精神的な意味を含んだ文化です。その「背景」をお伝えしながら、他分野の文化と重ね合わせることで、新しい見方や体験を生む場にしたいと考えています。


■今回のテーマは「落語 × 紅型」

今回のイベントでは、落語と紅型の組み合わせに挑戦します。

一見すると距離のある文化ですが、共通点も少なくありません。
落語は言葉で世界を描き、紅型は色で世界を映す。
表現の手段は違っても、どちらも「物語を伝える文化」です。

例えば、赤信号の“赤”は「止まる」という意味を持ちますが、紅型で使われる“赤”は生命力や祝福を象徴する色として扱われることがあります。
同じ色でも、文化や文脈によって意味が変わる――。
こうした「意味の変化」は、文化を体験する面白さの一つだと感じています。

今回ご一緒するのは、私の友人である お気楽亭すい好さん です。
社会人落語として長く活動されており、私は10年ほど前に初めて高座を拝聴しました。その時、言葉が情景をつくり、人の心に映像のように立ち上がる感覚を覚えたのをよく覚えています。

最近は出演依頼も増えているとのことで、今回の趣旨をお伝えしたところ、快く引き受けてくださいました。


■イベントの流れ(定員30名)

初めての共同開催ということもあり、今回は 30名限定 で実施いたします。落語側からも15名ほど参加予定で、工芸に触れたことがない方々にも来ていただける見込みです。新たな交流が生まれる場として、良い機会になると考えています。

●当日のスケジュール

17:30〜18:00
ギャラリー見学(紅型作品・工房の歴史など)
作品を近い距離でご覧いただきながら、空間の雰囲気も楽しんでいただきます。

18:00〜20:00
落語会(3名登壇予定)
落語の合間や前後に、私から
・紅型の制作背景
・工房の話
・色や文様に込めた意味
などを短くお話しする時間を取る予定です。

●参加費

3,000円
初の共同イベントとしての特別設定です。

●場所

祖父・栄喜の旧宅(現ギャラリー)

当日は展示とあわせて作品販売も行います。
ご興味を持たれたものがあれば、お手元で育てていただければ幸いです。


■文化体験は「その場でしか生まれないもの」

文化というものは、知識だけでは完結しません。
「どの場で、誰と、どの時間を共有したのか」で、感じ方や理解の深さが変わります。

紅型の色の重なりや落語の間の取り方は、その日の空気感や集まった方の反応によって、まったく違う表情を見せます。文化とは本来、こうした“生きている現象”だと思います。

今回の企画は、紅型と落語という異なる文化が交わることで
・色の意味が変わる瞬間
・言葉の印象が揺れる瞬間
・固定観念がそっとほどける瞬間
を体験していただくためのものです。

決して派手なイベントではありませんが、小さく深い文化体験になると確信しています。


■最後に

私は、文化は“受け取る人の数だけ姿を変える”ものだと思っています。
皆さんがその場にいてくださることで、落語も紅型も、当日の空気に合わせて新しい表情を見せてくれるはずです。

もしお時間が合いましたら、ぜひお気軽にご参加いただければ嬉しく思います。
そして、もし作品の中に心に残るものがあれば、お手元に迎えていただければ幸いです。

皆さんと共有できる時間を楽しみにしております。
どうぞよろしくお願いいたします。                       

LINE公式 https://line.me/R/ti/p/@275zrjgg

Instagram https://www.instagram.com/shiromabingata16/

公式ホームページでは、紅型の歴史や伝統、私自身の制作にかける思いなどを、やや丁寧に、文化的な視点も交えながら発信しています。一方でInstagramでは、職人の日常や工房のちょっとした風景、沖縄の光や緑の中に息づく“暮らしに根ざした紅型”の表情を気軽に紹介しています。たとえば、朝の染料作りの様子や、工房の裏庭で揺れる福木の葉っぱ、時には染めたての布を空にかざした一瞬の写真など、ものづくりの空気感を身近に感じていただける内容を心がけています。

紅型は決して遠い伝統ではなく、今を生きる私たちの日々とともにあるものです。これからも新しい挑戦と日々の積み重ねを大切にしながら、沖縄の染め物文化の魅力を発信し続けていきたいと思います。ぜひInstagramものぞいていただき、工房の日常や沖縄の彩りを一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。

城間栄市 プロフィール昭和52年(1977年)、沖縄県生まれ。

城間びんがた工房十五代・城間栄順の長男として育つ。

学歴・海外研修

  • 平成15年(2003年)より2年間、インドネシア・ジョグジャカルタ特別州に滞在し、バティック(ろうけつ染)を学ぶ。
  • 帰国後は城間びんがた工房にて、琉球びんがたの制作・指導に専念。

受賞・展覧会歴

  • 平成24年:西部工芸展 福岡市長賞 受賞
  • 平成25年:沖展 正会員に推挙
  • 平成26年:西部工芸展 奨励賞 受賞
  • 平成27年:日本工芸会 新人賞を受賞し、正会員に推挙
  • 令和3年:西部工芸展 沖縄タイムス社賞 受賞
  • 令和4年:MOA美術館 岡田茂吉賞 大賞 受賞
  • 令和5年:西部工芸展 西部支部長賞 受賞

主な出展

  • 「ポケモン工芸展」に出展
  • 文化庁主催「日中韓芸術祭」に出展
  • 令和6年:文化庁「技を極める」展に出展

現在の役職・活動

  • 城間びんがた工房 十六代 代表
  • 日本工芸会 正会員
  • 沖展(沖縄タイムス社主催公募展)染色部門 審査員
  • 沖縄県立芸術大学 非常勤講師

プロフィール概要

はじめまして。城間びんがた工房16代目の城間栄市です。私は1977年、十五代・城間栄順の長男として沖縄に生まれ、幼いころから紅型の仕事に親しみながら育ちました。工房に入った後は父のもとで修行を重ねつつ、沖縄県芸術祭「沖展」に初入選したことをきっかけに本格的に紅型作家として歩み始めました。

これまでの道のりの中で、沖展賞や日本工芸会の新人賞、西部伝統工芸展での沖縄タイムス社賞・西部支部長賞、そしてMOA美術館の岡田茂吉賞大賞など、さまざまな賞をいただくことができました。また、沖展の正会員や日本工芸会の正会員として活動しながら、審査員として後進の作品にも向き合う立場も経験しています。

私自身の制作で特に印象に残っているのは、「波の歌」という紅型着物の作品です。これは沖縄の海を泳ぐ生き物たちの姿を、藍型を基調とした布に躍動感をもって表現したものです。伝統の技法を守りつつ、そこに自分なりの視点や工夫を重ねることで、新しい紅型の可能性を切り拓きたいという思いが込められています。こうした活動を通して、紅型が沖縄の誇る伝統工芸であるだけでなく、日本、そして世界に発信できるアートであると感じています。

20代の頃にはアジア各地を巡り、2003年から2年間はインドネシア・ジョグジャカルタでバティック(ろうけつ染)を学びました。現地での生活や工芸の現場を通して、異文化の技術や感性にふれ、自分自身の紅型への向き合い方にも大きな影響を受けました。伝統を守るだけでなく、常に新しい刺激や発見を大切にしています。

最近では、「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」など、世界を巡回する企画展にも参加する機会が増えてきました。紅型の技法でポケモンを表現するというチャレンジは、私自身にとっても大きな刺激となりましたし、沖縄の紅型が海外のお客様にも響く可能性を感じています。

メディアにも多く取り上げていただくようになりました。テレビや新聞、ウェブメディアで工房の日常や制作現場が紹介されるたびに、「300年前と変わらない手仕事」に込めた想いを、多くの方に伝えたいと強く思います。