琉球文化を彩る紅型の秘密

南国の美しさを紡ぐ紅型~琉球の自然から生まれた色と形~

沖縄、日本の最南端に位置し、独自の文化を育んできたこの島々。その中で、琉球王国時代に発展した紅型は、この土地の自然や歴史が織りなす特別な染織技術です。紅型の色彩や模様は、沖縄の豊かな自然、特に南国特有の花々や風景からインスピレーションを得ています。自然の美しさを布に映し出すことで、紅型は沖縄の心そのものを表現してきました。

自然の色を映す紅型のデザイン

紅型の鮮やかな色使いを目にすると、沖縄の自然そのものが感じられます。真紅のハイビスカスや鮮やかなブーゲンビリア、陽光に輝く海の青など、自然が織りなす色彩がそのままデザインに生かされています。これらの色や形は、ただの装飾ではなく、この土地が持つ生命力や豊かさを映し出しています。南国の花々が持つ鮮烈な色彩や大胆な形は、紅型の模様に織り込まれ、布の中で再び命を吹き込まれるようです。

紅型を受け継ぐ人々の記憶

紅型の技術や精神は、私の祖父の時代より、工房で働かれた職人の方々を通じて引き継がれています。独立して作家として活動されている方々もおり、それぞれが自分の地元の自然や文化と融合した作品を生み出しています。紅型は決して一人の手だけで支えられてきたわけではなく、多くの人々の手を通じて、その魅力が受け継がれてきました。そうした中で、私たちの工房もまた、紅型の文化を未来へとつないでいく役割を果たしていると感じています。

文化の交差点としての沖縄

沖縄は、日本本土だけでなく、中国や東南アジアの影響も色濃く受けています。交易の中心地だった琉球王国時代、その影響は紅型のデザインにも取り入れられ、多様な文化との交わりが見られます。例えば、モチーフに登場する植物や動物、幾何学模様など、他地域とのつながりを感じさせる要素が紅型の中に息づいています。この多様性が、紅型の持つ独特な魅力を生み出しているのです。

自然から未来へつなぐ想い

紅型は単なる工芸ではありません。それは沖縄の自然や文化、そこで生きた人々の思いを次の世代へと伝える「記憶の布」です。制作を通じて、その色や形に触れるたびに、私たちはこの土地の豊かさを再発見し、それを未来へと受け継ぐ責任を感じます。紅型を通して沖縄の美しさを表現し、多くの方にその魅力を伝えたい。それが、作り手としての私たちの願いであり、使命です。

公式ホームページでは、紅型の歴史や伝統、私自身の制作にかける思いなどを、やや丁寧に、文化的な視点も交えながら発信しています。一方でInstagramでは、職人の日常や工房のちょっとした風景、沖縄の光や緑の中に息づく“暮らしに根ざした紅型”の表情を気軽に紹介しています。たとえば、朝の染料作りの様子や、工房の裏庭で揺れる福木の葉っぱ、時には染めたての布を空にかざした一瞬の写真など、ものづくりの空気感を身近に感じていただける内容を心がけています。

紅型は決して遠い伝統ではなく、今を生きる私たちの日々とともにあるものです。これからも新しい挑戦と日々の積み重ねを大切にしながら、沖縄の染め物文化の魅力を発信し続けていきたいと思います。ぜひInstagramものぞいていただき、工房の日常や沖縄の彩りを一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。

城間栄市 プロフィール昭和52年(1977年)、沖縄県生まれ。

城間びんがた工房十五代・城間栄順の長男として育つ。

学歴・海外研修

  • 平成15年(2003年)より2年間、インドネシア・ジョグジャカルタ特別州に滞在し、バティック(ろうけつ染)を学ぶ。
  • 帰国後は城間びんがた工房にて、琉球びんがたの制作・指導に専念。

受賞・展覧会歴

  • 平成24年:西部工芸展 福岡市長賞 受賞
  • 平成25年:沖展 正会員に推挙
  • 平成26年:西部工芸展 奨励賞 受賞
  • 平成27年:日本工芸会 新人賞を受賞し、正会員に推挙
  • 令和3年:西部工芸展 沖縄タイムス社賞 受賞
  • 令和4年:MOA美術館 岡田茂吉賞 大賞 受賞
  • 令和5年:西部工芸展 西部支部長賞 受賞

主な出展

  • 「ポケモン工芸展」に出展
  • 文化庁主催「日中韓芸術祭」に出展
  • 令和6年:文化庁「技を極める」展に出展

現在の役職・活動

  • 城間びんがた工房 十六代 代表
  • 日本工芸会 正会員
  • 沖展(沖縄タイムス社主催公募展)染色部門 審査員
  • 沖縄県立芸術大学 非常勤講師

プロフィール概要

はじめまして。城間びんがた工房16代目の城間栄市です。私は1977年、十五代・城間栄順の長男として沖縄に生まれ、幼いころから紅型の仕事に親しみながら育ちました。工房に入った後は父のもとで修行を重ねつつ、沖縄県芸術祭「沖展」に初入選したことをきっかけに本格的に紅型作家として歩み始めました。

これまでの道のりの中で、沖展賞や日本工芸会の新人賞、西部伝統工芸展での沖縄タイムス社賞・西部支部長賞、そしてMOA美術館の岡田茂吉賞大賞など、さまざまな賞をいただくことができました。また、沖展の正会員や日本工芸会の正会員として活動しながら、審査員として後進の作品にも向き合う立場も経験しています。

私自身の制作で特に印象に残っているのは、「波の歌」という紅型着物の作品です。これは沖縄の海を泳ぐ生き物たちの姿を、藍型を基調とした布に躍動感をもって表現したものです。伝統の技法を守りつつ、そこに自分なりの視点や工夫を重ねることで、新しい紅型の可能性を切り拓きたいという思いが込められています。こうした活動を通して、紅型が沖縄の誇る伝統工芸であるだけでなく、日本、そして世界に発信できるアートであると感じています。

20代の頃にはアジア各地を巡り、2003年から2年間はインドネシア・ジョグジャカルタでバティック(ろうけつ染)を学びました。現地での生活や工芸の現場を通して、異文化の技術や感性にふれ、自分自身の紅型への向き合い方にも大きな影響を受けました。伝統を守るだけでなく、常に新しい刺激や発見を大切にしています。

最近では、「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」など、世界を巡回する企画展にも参加する機会が増えてきました。紅型の技法でポケモンを表現するというチャレンジは、私自身にとっても大きな刺激となりましたし、沖縄の紅型が海外のお客様にも響く可能性を感じています。

メディアにも多く取り上げていただくようになりました。テレビや新聞、ウェブメディアで工房の日常や制作現場が紹介されるたびに、「300年前と変わらない手仕事」に込めた想いを、多くの方に伝えたいと強く思います。