琉球の心を伝える「祝いの布展」いよいよ開催
2024.11.27
おはようございます。
今日もこのホームページをご覧いただき、心より感謝申し上げます。こうして私たちの活動に関心を持っていただけることが、何よりの励みになります。
ここ沖縄は、北風が心地よい清々しい朝を迎えています。そして、いよいよ今週末に迫った**「祝いの布展」**。明後日から二日間、城間びんがた工房で開催いたします。このイベントを通じて、私たちが大切にしている「ものづくり」や、工房を通じて紡がれる琉球の歴史をお伝えできればと考えています。
工房のものづくり環境と想い
私たち城間びんがた工房では、作品制作に集中する環境をとても大切にしています。そのため、日常的な工房見学はお断りしております。工房は3階建てで、1階と3階が主な作業場になっています。1階では比較的人の出入りがあっても集中できる作業を行い、3階ではさらに集中力を要する繊細な工程を手掛けています。このような環境の中で、紅型の制作に向き合いながら、琉球王国時代から続く伝統を未来へ繋いでいます。
紅型は、かつて琉球王朝の庇護の下で育まれた伝統工芸です。王族や貴族の衣装として作られていた紅型は、廃藩置県後、琉球が失った支えの中でその存在を維持し続けました。さらに戦争で全てを失った祖父の時代、何もないところから復興を果たし、伝統を守り抜いてきたのです。沖縄がアメリカから日本に復帰した時代には、父の世代が日本の着物文化との融合に挑戦し、新たな可能性を切り拓きました。
そして現在、私は「ものづくりを通じて琉球の思いを守る」という信念を胸に、職人たちと日々制作に励んでいます。このイベントの根底にも、そんな思いが込められています。
イベントへの嬉しい展開
ありがたいことに、この「祝いの布展」には、沖縄のテレビ局RBCから取材の依頼をいただきました。ささやかに開催する予定だったこの会が、少しだけ賑わいを見せそうです。こうしたメディアを通じて、紅型の魅力や工房の取り組みを広く知っていただけるのは、大変ありがたいことです。
また、今回のギャラリー展示では特別な作品もご用意しています。その一つが、ポケモンと日本の工芸家とのコラボレーションイベント「ポケモン工芸」で制作した作品です。全国20名の工芸家の一人として私も参加し、沖縄から紅型を通じてこの企画に携わりました。この作品は今回の展示で初めて皆さまにお披露目いたします。ぜひご覧いただければと思います。
紅型制作の時間と喜び
紅型制作は、型紙の図案を形にするまでに1ヵ月から半年といった長い時間を要します。そのため、気持ちの抑揚をあまり作らず、じっくりと向き合うことが重要です。それでも、こうして皆さまに直接お目にかかれる機会が近づいてくると、ほんのりとテンションが上がり、心が躍ります。
今回のイベントは、職人たちが作る日々の営みと琉球の歴史を体感していただける場になるよう準備を進めています。皆さまと直接お会いし、紅型や工房の空気感を共有できることを、心から楽しみにしております。
どうぞ、イベント当日をお楽しみに。そして、引き続き私たちの活動を見守っていただければ幸いです。






公式ホームページでは、紅型の歴史や伝統、私自身の制作にかける思いなどを、やや丁寧に、文化的な視点も交えながら発信しています。一方でInstagramでは、職人の日常や工房のちょっとした風景、沖縄の光や緑の中に息づく“暮らしに根ざした紅型”の表情を気軽に紹介しています。たとえば、朝の染料作りの様子や、工房の裏庭で揺れる福木の葉っぱ、時には染めたての布を空にかざした一瞬の写真など、ものづくりの空気感を身近に感じていただける内容を心がけています。
紅型は決して遠い伝統ではなく、今を生きる私たちの日々とともにあるものです。これからも新しい挑戦と日々の積み重ねを大切にしながら、沖縄の染め物文化の魅力を発信し続けていきたいと思います。ぜひInstagramものぞいていただき、工房の日常や沖縄の彩りを一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。

城間栄市 プロフィール昭和52年(1977年)、沖縄県生まれ。
城間びんがた工房十五代・城間栄順の長男として育つ。
学歴・海外研修
- 平成15年(2003年)より2年間、インドネシア・ジョグジャカルタ特別州に滞在し、バティック(ろうけつ染)を学ぶ。
- 帰国後は城間びんがた工房にて、琉球びんがたの制作・指導に専念。
受賞・展覧会歴
- 平成24年:西部工芸展 福岡市長賞 受賞
- 平成25年:沖展 正会員に推挙
- 平成26年:西部工芸展 奨励賞 受賞
- 平成27年:日本工芸会 新人賞を受賞し、正会員に推挙
- 令和3年:西部工芸展 沖縄タイムス社賞 受賞
- 令和4年:MOA美術館 岡田茂吉賞 大賞 受賞
- 令和5年:西部工芸展 西部支部長賞 受賞
主な出展
- 「ポケモン工芸展」に出展
- 文化庁主催「日中韓芸術祭」に出展
- 令和6年:文化庁「技を極める」展に出展
現在の役職・活動
- 城間びんがた工房 十六代 代表
- 日本工芸会 正会員
- 沖展(沖縄タイムス社主催公募展)染色部門 審査員
- 沖縄県立芸術大学 非常勤講師
プロフィール概要
はじめまして。城間びんがた工房16代目の城間栄市です。私は1977年、十五代・城間栄順の長男として沖縄に生まれ、幼いころから紅型の仕事に親しみながら育ちました。工房に入った後は父のもとで修行を重ねつつ、沖縄県芸術祭「沖展」に初入選したことをきっかけに本格的に紅型作家として歩み始めました。
これまでの道のりの中で、沖展賞や日本工芸会の新人賞、西部伝統工芸展での沖縄タイムス社賞・西部支部長賞、そしてMOA美術館の岡田茂吉賞大賞など、さまざまな賞をいただくことができました。また、沖展の正会員や日本工芸会の正会員として活動しながら、審査員として後進の作品にも向き合う立場も経験しています。
私自身の制作で特に印象に残っているのは、「波の歌」という紅型着物の作品です。これは沖縄の海を泳ぐ生き物たちの姿を、藍型を基調とした布に躍動感をもって表現したものです。伝統の技法を守りつつ、そこに自分なりの視点や工夫を重ねることで、新しい紅型の可能性を切り拓きたいという思いが込められています。こうした活動を通して、紅型が沖縄の誇る伝統工芸であるだけでなく、日本、そして世界に発信できるアートであると感じています。
20代の頃にはアジア各地を巡り、2003年から2年間はインドネシア・ジョグジャカルタでバティック(ろうけつ染)を学びました。現地での生活や工芸の現場を通して、異文化の技術や感性にふれ、自分自身の紅型への向き合い方にも大きな影響を受けました。伝統を守るだけでなく、常に新しい刺激や発見を大切にしています。
最近では、「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」など、世界を巡回する企画展にも参加する機会が増えてきました。紅型の技法でポケモンを表現するというチャレンジは、私自身にとっても大きな刺激となりましたし、沖縄の紅型が海外のお客様にも響く可能性を感じています。
メディアにも多く取り上げていただくようになりました。テレビや新聞、ウェブメディアで工房の日常や制作現場が紹介されるたびに、「300年前と変わらない手仕事」に込めた想いを、多くの方に伝えたいと強く思います。