父と祖父に学んだ、ものづくりと早朝の時間
2025.02.13
朝の時間について
いつもご覧いただき、ありがとうございます。紅型を通して琉球文化が伝わっていくことに、心から感謝しております。皆様の好奇心に支えられ、今日も仕事に打ち込めることに喜びを感じています。
私の父も祖父も、朝がとても早い人でした。私の記憶では、父は毎朝5時に起き、夕方5時には飲み屋へ行くというのが彼のスタイルでした。この習慣は、75歳で肺がんを患うまで続いていました。父はタバコを吸い、お酒もよく飲みましたが、それでも91歳まで元気に過ごしています。
父が朝5時に起き、夕方5時には家を出る生活だったため、私は幼い頃あまり父の姿を見た記憶がありません。夜10時頃に帰ってくるため、私はすでに寝ている時間帯でした。おそらく、日本の昭和後半から平成にかけての一般的な父親像と同じだったのではないかと思います。
しかし、私自身が工房を引き継ぎ、ものづくりに向き合う中で気づいたことがあります。それは、**「朝早く起きることは、直感力を研ぎ澄ませ、創造的な活動にとって非常に有利である」**ということです。
朝が苦手だった私が早起きを習慣にするまで
実は私は、もともと朝がとても苦手でした。今振り返ると、8年ほど前からようやく早起きの習慣がついたのではないかと思います。それまでは、朝の清々しい時間に制作をしたり、心を整えたり、日々の日記を書いたりすることの重要性を理解しながらも、なかなか習慣化できませんでした。
私がインドネシアから帰国したのは30歳前後の頃でした。工房を引き継ぐ決意をした時点で、「朝の時間を有効に使わなければならない」と漠然と考えていました。しかし、それを本当の習慣に落とし込むまでに10年近くかかってしまったのです。
今では、基本的に何もなければ朝4時前には起きています。この早起きの習慣がしっかりと身についたことで、心身ともにとても楽になりました。年に1〜2回、お酒を飲みすぎたときに7時まで寝てしまうこともありますが、それでも自然と朝早く目覚める生活になっています。
「頑張って早起きしよう」と意識するのではなく、毎日当たり前に起きていると、それが自然なリズムになる。この習慣が身についたことを、今では本当にありがたく感じています。
朝の景色と創作意欲
朝の澄み切った空気の中で、静かに目を覚まし、仕事に向かう時間は格別です。写真のような朝焼けの景色を見ると、想像力が膨らみ、創作意欲が湧いてくるのを感じます。

最後に
振り返ると、父も祖父も非常にシンプルな生活を送っていました。紅型の制作は、一つひとつの工程をコツコツと積み重ね、長い時間をかけて仕上げる仕事です。そのため、心と体のリズムを整える健康的な生活習慣が、ものづくりには欠かせないのだと改めて感じます。
こうした日々を続けることで、私も父や祖父が歩んできた道を追いながら、自分自身の仕事に向き合っていきたいと思います。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。皆様の貴重な時間を使って読んでいただいたことに、改めて感謝いたします。朝の時間の過ごし方や習慣について、皆さんの考えもぜひ聞かせていただければ嬉しいです。これからも、紅型を通じて琉球文化を伝えていけるよう、誠実に仕事に向き合ってまいります。










城間栄市 (しろま・えいいち) プロフィール
生年・出身
昭和52年(1977年)、沖縄県生まれ。
城間びんがた工房十五代・城間栄順の長男として育ち、幼少期より琉球びんがたに親しむ。
学歴・海外研修
- 平成15年(2003年)から2年間、インドネシア・ジョグジャカルタ特別州に滞在し、バティック(ろうけつ染)を学ぶ。
- 帰国後は城間びんがた工房にて琉球びんがたの制作・指導に専念。
経歴・受賞・展覧会歴
沖展(沖縄タイムス社主催公募展)
- 2000年(第52回):初入選
- 2003年(第55回):奨励賞
- 2008年(第60回):奨励賞(「ゴマアイゴ紋様」)
- 2010年(第62回):奨励賞(「上昇波(ジョウショウハ)」)
- 2011年(第63回):沖展賞(「イナズマ ガンガゼ」)、準会員推挙
- 2012年(第64回):準会員賞(「すくゆい」)
- 2013年(第65回):準会員賞(「紅型着物『雲を読む』」)、会員推挙
西部工芸展
- 平成24年(2012年):第47回 西部伝統工芸展 福岡市長賞
- 平成26年(2014年):第49回 西部伝統工芸展 奨励賞
- 令和3年(2021年):沖縄タイムス社賞
- 令和5年(2023年):西部支部長賞
日本伝統工芸会
- 平成25年(2013年):沖展 正会員に推挙
- 平成27年(2015年):日本伝統工芸展 新人賞受賞、日本工芸会 正会員に推挙
その他の活動・受賞
- 令和4年(2022年):MOA美術館 岡田茂吉賞 大賞
- 「ポケモン工芸展」に出展
- 文化庁主催「日中韓芸術祭」に出展
- 令和6年(2024年):文化庁「技を極める」展に出展
- 2014年:城間びんがた工房 十六代継承
現在の役職・活動
- 城間びんがた工房 十六代 代表
- 日本工芸会 正会員
- 沖展(沖縄タイムス社主催公募展)染色部門 審査員
- 沖縄県立芸術大学 非常勤講師
プロフィール概要
城間 栄市(しろま・えいいち)は、昭和52年(1977年)生まれの琉球びんがた作家。城間びんがた工房十五代・城間栄順の長男として生まれ育ち、幼少期から伝統工芸の世界に馴染む。
平成15年(2003年)から2年間、インドネシアでバティック(ろうけつ染)を学び、帰国後は琉球びんがたの技法を継承しながら、海外の経験を活かした新しい表現を追求し続けている。
数々の受賞歴を有し、日本工芸会 正会員や沖展染色部門の審査員など、多方面で活躍。文化庁やMOA美術館主催の展覧会にも出展を重ね、琉球びんがたの魅力を国内外へ発信している。現在は城間びんがた工房の十六代代表として制作・指導にあたりつつ、沖縄県立芸術大学の非常勤講師として後進の育成にも努めている。