父と祖父に学んだ、ものづくりと早朝の時間

朝の時間について

いつもご覧いただき、ありがとうございます。紅型を通して琉球文化が伝わっていくことに、心から感謝しております。皆様の好奇心に支えられ、今日も仕事に打ち込めることに喜びを感じています。

私の父も祖父も、朝がとても早い人でした。私の記憶では、父は毎朝5時に起き、夕方5時には飲み屋へ行くというのが彼のスタイルでした。この習慣は、75歳で肺がんを患うまで続いていました。父はタバコを吸い、お酒もよく飲みましたが、それでも91歳まで元気に過ごしています。

父が朝5時に起き、夕方5時には家を出る生活だったため、私は幼い頃あまり父の姿を見た記憶がありません。夜10時頃に帰ってくるため、私はすでに寝ている時間帯でした。おそらく、日本の昭和後半から平成にかけての一般的な父親像と同じだったのではないかと思います。

しかし、私自身が工房を引き継ぎ、ものづくりに向き合う中で気づいたことがあります。それは、**「朝早く起きることは、直感力を研ぎ澄ませ、創造的な活動にとって非常に有利である」**ということです。

朝が苦手だった私が早起きを習慣にするまで

実は私は、もともと朝がとても苦手でした。今振り返ると、8年ほど前からようやく早起きの習慣がついたのではないかと思います。それまでは、朝の清々しい時間に制作をしたり、心を整えたり、日々の日記を書いたりすることの重要性を理解しながらも、なかなか習慣化できませんでした。

私がインドネシアから帰国したのは30歳前後の頃でした。工房を引き継ぐ決意をした時点で、「朝の時間を有効に使わなければならない」と漠然と考えていました。しかし、それを本当の習慣に落とし込むまでに10年近くかかってしまったのです。

今では、基本的に何もなければ朝4時前には起きています。この早起きの習慣がしっかりと身についたことで、心身ともにとても楽になりました。年に1〜2回、お酒を飲みすぎたときに7時まで寝てしまうこともありますが、それでも自然と朝早く目覚める生活になっています。

「頑張って早起きしよう」と意識するのではなく、毎日当たり前に起きていると、それが自然なリズムになる。この習慣が身についたことを、今では本当にありがたく感じています。

朝の景色と創作意欲

朝の澄み切った空気の中で、静かに目を覚まし、仕事に向かう時間は格別です。写真のような朝焼けの景色を見ると、想像力が膨らみ、創作意欲が湧いてくるのを感じます。

最後に

振り返ると、父も祖父も非常にシンプルな生活を送っていました。紅型の制作は、一つひとつの工程をコツコツと積み重ね、長い時間をかけて仕上げる仕事です。そのため、心と体のリズムを整える健康的な生活習慣が、ものづくりには欠かせないのだと改めて感じます。

こうした日々を続けることで、私も父や祖父が歩んできた道を追いながら、自分自身の仕事に向き合っていきたいと思います。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。皆様の貴重な時間を使って読んでいただいたことに、改めて感謝いたします。朝の時間の過ごし方や習慣について、皆さんの考えもぜひ聞かせていただければ嬉しいです。これからも、紅型を通じて琉球文化を伝えていけるよう、誠実に仕事に向き合ってまいります。

公式ホームページでは、紅型の歴史や伝統、私自身の制作にかける思いなどを、やや丁寧に、文化的な視点も交えながら発信しています。一方でInstagramでは、職人の日常や工房のちょっとした風景、沖縄の光や緑の中に息づく“暮らしに根ざした紅型”の表情を気軽に紹介しています。たとえば、朝の染料作りの様子や、工房の裏庭で揺れる福木の葉っぱ、時には染めたての布を空にかざした一瞬の写真など、ものづくりの空気感を身近に感じていただける内容を心がけています。

紅型は決して遠い伝統ではなく、今を生きる私たちの日々とともにあるものです。これからも新しい挑戦と日々の積み重ねを大切にしながら、沖縄の染め物文化の魅力を発信し続けていきたいと思います。ぜひInstagramものぞいていただき、工房の日常や沖縄の彩りを一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。

城間栄市 プロフィール昭和52年(1977年)、沖縄県生まれ。

城間びんがた工房十五代・城間栄順の長男として育つ。

学歴・海外研修

  • 平成15年(2003年)より2年間、インドネシア・ジョグジャカルタ特別州に滞在し、バティック(ろうけつ染)を学ぶ。
  • 帰国後は城間びんがた工房にて、琉球びんがたの制作・指導に専念。

受賞・展覧会歴

  • 平成24年:西部工芸展 福岡市長賞 受賞
  • 平成25年:沖展 正会員に推挙
  • 平成26年:西部工芸展 奨励賞 受賞
  • 平成27年:日本工芸会 新人賞を受賞し、正会員に推挙
  • 令和3年:西部工芸展 沖縄タイムス社賞 受賞
  • 令和4年:MOA美術館 岡田茂吉賞 大賞 受賞
  • 令和5年:西部工芸展 西部支部長賞 受賞

主な出展

  • 「ポケモン工芸展」に出展
  • 文化庁主催「日中韓芸術祭」に出展
  • 令和6年:文化庁「技を極める」展に出展

現在の役職・活動

  • 城間びんがた工房 十六代 代表
  • 日本工芸会 正会員
  • 沖展(沖縄タイムス社主催公募展)染色部門 審査員
  • 沖縄県立芸術大学 非常勤講師

プロフィール概要

はじめまして。城間びんがた工房16代目の城間栄市です。私は1977年、十五代・城間栄順の長男として沖縄に生まれ、幼いころから紅型の仕事に親しみながら育ちました。工房に入った後は父のもとで修行を重ねつつ、沖縄県芸術祭「沖展」に初入選したことをきっかけに本格的に紅型作家として歩み始めました。

これまでの道のりの中で、沖展賞や日本工芸会の新人賞、西部伝統工芸展での沖縄タイムス社賞・西部支部長賞、そしてMOA美術館の岡田茂吉賞大賞など、さまざまな賞をいただくことができました。また、沖展の正会員や日本工芸会の正会員として活動しながら、審査員として後進の作品にも向き合う立場も経験しています。

私自身の制作で特に印象に残っているのは、「波の歌」という紅型着物の作品です。これは沖縄の海を泳ぐ生き物たちの姿を、藍型を基調とした布に躍動感をもって表現したものです。伝統の技法を守りつつ、そこに自分なりの視点や工夫を重ねることで、新しい紅型の可能性を切り拓きたいという思いが込められています。こうした活動を通して、紅型が沖縄の誇る伝統工芸であるだけでなく、日本、そして世界に発信できるアートであると感じています。

20代の頃にはアジア各地を巡り、2003年から2年間はインドネシア・ジョグジャカルタでバティック(ろうけつ染)を学びました。現地での生活や工芸の現場を通して、異文化の技術や感性にふれ、自分自身の紅型への向き合い方にも大きな影響を受けました。伝統を守るだけでなく、常に新しい刺激や発見を大切にしています。

最近では、「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」など、世界を巡回する企画展にも参加する機会が増えてきました。紅型の技法でポケモンを表現するというチャレンジは、私自身にとっても大きな刺激となりましたし、沖縄の紅型が海外のお客様にも響く可能性を感じています。

メディアにも多く取り上げていただくようになりました。テレビや新聞、ウェブメディアで工房の日常や制作現場が紹介されるたびに、「300年前と変わらない手仕事」に込めた想いを、多くの方に伝えたいと強く思います。