旅する記憶、紅型に込めた遠い憧れ
2024.11.24
おはようございます。いつもブログを見ていただき、本当にありがとうございます。あなたがこうして興味を持ってくださることが、私たち城間びんがた工房にとって何よりの励みです。今日は少しだけ、私たちのことや今週末のイベントの話をお伝えしたいと思います。どうぞお付き合いください。
まず改めて、私たちは琉球王国時代から続く伝統工芸「紅型」を作り続けている工房です。私は16代目として、この工房の歴史を引き継ぎながら、職人たちとともに日々制作に向き合っています。紅型は王族や貴族の衣装として生まれた工芸であり、歴史の中でじっくりと育まれてきたもの。100年以上変わらない制作工程で、今でも昔ながらのやり方を大切にしています。
そしていよいよ、今週末の「祝いの布展」が迫ってきました。11月29日(金)と30日(土)の二日間、午前と午後の部で開催しますが、現在のところ29日の午後を除き、すべての枠が満席となりました。本当にありがとうございます!このイベントは、普段は工房見学をお断りしている私たちにとって、紅型の世界を知っていただく貴重な機会です。今回、あなたのような方々が足を運んでくださることに、感謝の気持ちでいっぱいです。
イベントでは、工房見学や琉球舞踊の鑑賞、ギャラリーでの作品展示をご用意しています。特に見学の時間では、職人が実際に制作している様子をご覧いただけます。紅型がどのように作られ、どんな工程を経て美しい作品に仕上がるのか、職人の手元を見ながら体感していただけると思います。
少し話はそれますが、今の沖縄の街にはトックリキワタの花が咲き始めています。この花は、ピンク色の鮮やかな花弁が特徴で、毎年この時期になると、まるで打ち合わせをしたかのように一斉に咲き始めます。その美しさには毎年目を奪われます。そして、この花が終わると、今度は緑色のナスのような形をした綿の実がなります。少し不思議な形ですが、これがまた面白い風景を作り出してくれるんです。
実はこのトックリキワタ、私が若い頃に滞在していたインドネシアでもよく見かけた木なんです。その頃の空気や香りを思い出すと、この花が私にとって特別な存在であることに気づきます。暖かい地域に広く分布する植物なのかもしれませんね。そう考えると、紅型もまた、沖縄の風土や文化を背景に育まれてきた工芸品。自然や環境と深く結びついているものだと改めて感じます。
今回のイベントを通して、紅型の魅力をより深く知っていただけると本当に嬉しいです。また、私たちが大切にしている職人としての姿勢や、工房の雰囲気を少しでも感じ取っていただけたら幸いです。日常ではなかなかお伝えしきれない部分を、ぜひこの機会に直接見て、触れていただけたらと思っています。






公式ホームページでは、紅型の歴史や伝統、私自身の制作にかける思いなどを、やや丁寧に、文化的な視点も交えながら発信しています。一方でInstagramでは、職人の日常や工房のちょっとした風景、沖縄の光や緑の中に息づく“暮らしに根ざした紅型”の表情を気軽に紹介しています。たとえば、朝の染料作りの様子や、工房の裏庭で揺れる福木の葉っぱ、時には染めたての布を空にかざした一瞬の写真など、ものづくりの空気感を身近に感じていただける内容を心がけています。
紅型は決して遠い伝統ではなく、今を生きる私たちの日々とともにあるものです。これからも新しい挑戦と日々の積み重ねを大切にしながら、沖縄の染め物文化の魅力を発信し続けていきたいと思います。ぜひInstagramものぞいていただき、工房の日常や沖縄の彩りを一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。

城間栄市 プロフィール昭和52年(1977年)、沖縄県生まれ。
城間びんがた工房十五代・城間栄順の長男として育つ。
学歴・海外研修
- 平成15年(2003年)より2年間、インドネシア・ジョグジャカルタ特別州に滞在し、バティック(ろうけつ染)を学ぶ。
- 帰国後は城間びんがた工房にて、琉球びんがたの制作・指導に専念。
受賞・展覧会歴
- 平成24年:西部工芸展 福岡市長賞 受賞
- 平成25年:沖展 正会員に推挙
- 平成26年:西部工芸展 奨励賞 受賞
- 平成27年:日本工芸会 新人賞を受賞し、正会員に推挙
- 令和3年:西部工芸展 沖縄タイムス社賞 受賞
- 令和4年:MOA美術館 岡田茂吉賞 大賞 受賞
- 令和5年:西部工芸展 西部支部長賞 受賞
主な出展
- 「ポケモン工芸展」に出展
- 文化庁主催「日中韓芸術祭」に出展
- 令和6年:文化庁「技を極める」展に出展
現在の役職・活動
- 城間びんがた工房 十六代 代表
- 日本工芸会 正会員
- 沖展(沖縄タイムス社主催公募展)染色部門 審査員
- 沖縄県立芸術大学 非常勤講師
プロフィール概要
はじめまして。城間びんがた工房16代目の城間栄市です。私は1977年、十五代・城間栄順の長男として沖縄に生まれ、幼いころから紅型の仕事に親しみながら育ちました。工房に入った後は父のもとで修行を重ねつつ、沖縄県芸術祭「沖展」に初入選したことをきっかけに本格的に紅型作家として歩み始めました。
これまでの道のりの中で、沖展賞や日本工芸会の新人賞、西部伝統工芸展での沖縄タイムス社賞・西部支部長賞、そしてMOA美術館の岡田茂吉賞大賞など、さまざまな賞をいただくことができました。また、沖展の正会員や日本工芸会の正会員として活動しながら、審査員として後進の作品にも向き合う立場も経験しています。
私自身の制作で特に印象に残っているのは、「波の歌」という紅型着物の作品です。これは沖縄の海を泳ぐ生き物たちの姿を、藍型を基調とした布に躍動感をもって表現したものです。伝統の技法を守りつつ、そこに自分なりの視点や工夫を重ねることで、新しい紅型の可能性を切り拓きたいという思いが込められています。こうした活動を通して、紅型が沖縄の誇る伝統工芸であるだけでなく、日本、そして世界に発信できるアートであると感じています。
20代の頃にはアジア各地を巡り、2003年から2年間はインドネシア・ジョグジャカルタでバティック(ろうけつ染)を学びました。現地での生活や工芸の現場を通して、異文化の技術や感性にふれ、自分自身の紅型への向き合い方にも大きな影響を受けました。伝統を守るだけでなく、常に新しい刺激や発見を大切にしています。
最近では、「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」など、世界を巡回する企画展にも参加する機会が増えてきました。紅型の技法でポケモンを表現するというチャレンジは、私自身にとっても大きな刺激となりましたし、沖縄の紅型が海外のお客様にも響く可能性を感じています。
メディアにも多く取り上げていただくようになりました。テレビや新聞、ウェブメディアで工房の日常や制作現場が紹介されるたびに、「300年前と変わらない手仕事」に込めた想いを、多くの方に伝えたいと強く思います。