手を動かし続けることで未来が生まれる—琉球の染めに込める想い

おはようございます!いつもご覧いただきありがとうございます。

琉球王国時代から続く紅型を受け継ぐ 城間びんがた工房 です。私は16代目の城間栄市と申します。
祖父の時代から私たちの工房には 20名前後の職人 が働いており、今でも同じくらいの規模で続いています。
工房は 首里城近くの首里山川町 にあり、私にとっては 生まれ育った実家でもあります。

私の習慣:「毎朝、父と握手すること」

コロナ前から続けている習慣があります。
それは 毎朝、父と握手すること です。

父は 実の親 であると同時に、 職業の親 でもあります。
仕事が始まる前に、気持ちをリセットし 「今日も良い仕事をさせてください」 という想いを込めて握手をします。

向こうが父(15代)  父と毎朝握手します

初心に帰る時間を持つ大切さ

コロナ禍で 紅型の工房ですら大変な状況 に陥りました。
その時、ふと 祖父や父の時代 を思いました。

戦争を経験し、すべてが壊れた沖縄。
その中で どういう想いで紅型を守り続けたのか
どれほどの困難を乗り越えて、今の工房があるのか。

「 初心に帰る時間を持たなければならない 」
そう思った時、自然と 握手する習慣 が生まれました。

「ものづくりを通して琉球の思いを守る」

私たちの工房の 経営理念 は、
「ものづくりを通して琉球の思いを守る」 から始まります。

この理念を掲げたのは コロナ前 でしたが、
コロナを経て、改めて どんな気持ちで仕事を続けるべきか を深く考えました。

工房の棟梁として「仕事に惚れる人を増やす」

私は 工房の棟梁 として、 どれだけ仕事に惚れてくれる人を増やせるか を常に考えています。

かつて、40年以上紅型を続けた 先輩職人 がいました。
新しい柄を手がけるたびに、まるで 誕生日プレゼントを開ける子どものように目を輝かせていた のを覚えています。

隈取り

「ああ、こんなふうに仕事に向き合う人生って素敵だな」
そう思いました。

私も今、そんな職人を一人でも多く増やしたい というささやかな願いを持っています。

共に働く仲間と過ごす時間

工房の運営は 細やかな傷が日々積み重なる作業 でもあります。
ですが、同じ志を持つ仲間と 時間を共有することで、その傷を癒してもらっている と感じます。

今日もまた 自分との約束を守り、自分のやりたい仕事に向き合う
そんな気持ちで、工房に立ちたいと思います。

今日もまた、紅型を染める

こうして毎朝、父と握手し、気持ちを整え、仕事に向かう。
それを積み重ねることで、工房は続いていくのだと思います。

今日もまた、紅型を染める。
今日もまた、自分との約束を守る。
今日もまた、未来へ向けて、一歩を踏み出す。

その積み重ねが、きっと 次の時代の職人たちにつながる と信じています。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。
皆さまの 関心と好奇心が、私たちの何よりの励み です。

心からの感謝を込めて。

筒描き 「うちくい」
筒描き タペストリー
踊り衣装

公式ホームページでは、紅型の歴史や伝統、私自身の制作にかける思いなどを、やや丁寧に、文化的な視点も交えながら発信しています。一方でInstagramでは、職人の日常や工房のちょっとした風景、沖縄の光や緑の中に息づく“暮らしに根ざした紅型”の表情を気軽に紹介しています。たとえば、朝の染料作りの様子や、工房の裏庭で揺れる福木の葉っぱ、時には染めたての布を空にかざした一瞬の写真など、ものづくりの空気感を身近に感じていただける内容を心がけています。

紅型は決して遠い伝統ではなく、今を生きる私たちの日々とともにあるものです。これからも新しい挑戦と日々の積み重ねを大切にしながら、沖縄の染め物文化の魅力を発信し続けていきたいと思います。ぜひInstagramものぞいていただき、工房の日常や沖縄の彩りを一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。

城間栄市 プロフィール昭和52年(1977年)、沖縄県生まれ。

城間びんがた工房十五代・城間栄順の長男として育つ。

学歴・海外研修

  • 平成15年(2003年)より2年間、インドネシア・ジョグジャカルタ特別州に滞在し、バティック(ろうけつ染)を学ぶ。
  • 帰国後は城間びんがた工房にて、琉球びんがたの制作・指導に専念。

受賞・展覧会歴

  • 平成24年:西部工芸展 福岡市長賞 受賞
  • 平成25年:沖展 正会員に推挙
  • 平成26年:西部工芸展 奨励賞 受賞
  • 平成27年:日本工芸会 新人賞を受賞し、正会員に推挙
  • 令和3年:西部工芸展 沖縄タイムス社賞 受賞
  • 令和4年:MOA美術館 岡田茂吉賞 大賞 受賞
  • 令和5年:西部工芸展 西部支部長賞 受賞

主な出展

  • 「ポケモン工芸展」に出展
  • 文化庁主催「日中韓芸術祭」に出展
  • 令和6年:文化庁「技を極める」展に出展

現在の役職・活動

  • 城間びんがた工房 十六代 代表
  • 日本工芸会 正会員
  • 沖展(沖縄タイムス社主催公募展)染色部門 審査員
  • 沖縄県立芸術大学 非常勤講師

プロフィール概要

はじめまして。城間びんがた工房16代目の城間栄市です。私は1977年、十五代・城間栄順の長男として沖縄に生まれ、幼いころから紅型の仕事に親しみながら育ちました。工房に入った後は父のもとで修行を重ねつつ、沖縄県芸術祭「沖展」に初入選したことをきっかけに本格的に紅型作家として歩み始めました。

これまでの道のりの中で、沖展賞や日本工芸会の新人賞、西部伝統工芸展での沖縄タイムス社賞・西部支部長賞、そしてMOA美術館の岡田茂吉賞大賞など、さまざまな賞をいただくことができました。また、沖展の正会員や日本工芸会の正会員として活動しながら、審査員として後進の作品にも向き合う立場も経験しています。

私自身の制作で特に印象に残っているのは、「波の歌」という紅型着物の作品です。これは沖縄の海を泳ぐ生き物たちの姿を、藍型を基調とした布に躍動感をもって表現したものです。伝統の技法を守りつつ、そこに自分なりの視点や工夫を重ねることで、新しい紅型の可能性を切り拓きたいという思いが込められています。こうした活動を通して、紅型が沖縄の誇る伝統工芸であるだけでなく、日本、そして世界に発信できるアートであると感じています。

20代の頃にはアジア各地を巡り、2003年から2年間はインドネシア・ジョグジャカルタでバティック(ろうけつ染)を学びました。現地での生活や工芸の現場を通して、異文化の技術や感性にふれ、自分自身の紅型への向き合い方にも大きな影響を受けました。伝統を守るだけでなく、常に新しい刺激や発見を大切にしています。

最近では、「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」など、世界を巡回する企画展にも参加する機会が増えてきました。紅型の技法でポケモンを表現するというチャレンジは、私自身にとっても大きな刺激となりましたし、沖縄の紅型が海外のお客様にも響く可能性を感じています。

メディアにも多く取り上げていただくようになりました。テレビや新聞、ウェブメディアで工房の日常や制作現場が紹介されるたびに、「300年前と変わらない手仕事」に込めた想いを、多くの方に伝えたいと強く思います。