「紅型の100年:変わらない伝統、変わり続ける感性」
2024.11.20
4つの台風が過ぎ去り、工房に訪れる季節の変化を感じて
こんにちは。今日もこのブログを読んでいただき、本当にありがとうございます。
沖縄では、4つもの台風が去り、北風が吹き始めました。季節が移ろう瞬間を肌で感じながら、ふと「気候が昔と随分変わったな」と思わずにはいられません。沖縄北部では記録的な豪雨もありました。
さて、来週の金曜日と土曜日、「祝いの布」展がいよいよ開催されます。おかげさまで、土曜日の午前の部が満席となりました。心から感謝しています。いつも思うのですが、こうして直接お会いできる機会があることが、私たちにとって大きな励みです。今回は半数ほどがリピートでご参加くださるとのこと。どんな新しいお話をお届けできるのか、今から考えを巡らせています。
現場での体験を大切にした新たな試み
前回は、スライドを使って紅型の歴史や工房の話、工程を説明する20分間の時間を設けていました。でも今回は、もっと「生」の現場をお見せしたいと思い、職人たちが実際に制作している様子を、私が案内しながら解説するスタイルに挑戦します。この試みがうまくいくかどうかは分かりませんが、職人たちが守り続けてきた伝統を、少しでも直接感じていただけたらという思いで取り組んでいます。
以前、砥石と刃物の先生から「古いものと最先端のものには共通点がある」と教わったことがあります。今、その言葉をよく噛みしめています。紅型は100年前とほぼ変わらない方法で作られています。もしかすると、私たちはそのやり方を頑なに守り続けただけなのかもしれません。でも、その頑固さがあったからこそ表現できるものがあると信じています。あなたがこの時代を生きる感性で、どんなふうにこの技術や空間を感じ取ってくださるのか、私自身とても楽しみにしています。
変わらないからこそ伝わるものがある
紅型を100年間ほとんど変わらない方法で作り続けてきた私たち。そのやり方に誇りを持ちながらも、時折問いかけたくなります。「変わらなかったのはなぜだろう?」創意工夫が足りなかったから?変化に背を向けてしまったから?それとも、この方法でしか表現できない何かがあると、信念を持っていたから?
正直なところ、今も答えは分かりません。ただ、こうした問いも含めて共有し、直接ご意見を伺うことには大きな意味があると思っています。工房の空気感、職人たちの手の動き、そして伝統を守るという私たちの覚悟を少しでも感じていただけたら嬉しいです。
土曜日の午前が満席になったことで少しホッとしつつ、それ以上に感謝の気持ちが心に広がっています。今はただ、お会いできる時間を心待ちにしながら、最後の準備に力を入れています。どうか当日、素敵な時間を一緒に過ごせますように。





公式ホームページでは、紅型の歴史や伝統、私自身の制作にかける思いなどを、やや丁寧に、文化的な視点も交えながら発信しています。一方でInstagramでは、職人の日常や工房のちょっとした風景、沖縄の光や緑の中に息づく“暮らしに根ざした紅型”の表情を気軽に紹介しています。たとえば、朝の染料作りの様子や、工房の裏庭で揺れる福木の葉っぱ、時には染めたての布を空にかざした一瞬の写真など、ものづくりの空気感を身近に感じていただける内容を心がけています。
紅型は決して遠い伝統ではなく、今を生きる私たちの日々とともにあるものです。これからも新しい挑戦と日々の積み重ねを大切にしながら、沖縄の染め物文化の魅力を発信し続けていきたいと思います。ぜひInstagramものぞいていただき、工房の日常や沖縄の彩りを一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。

城間栄市 プロフィール昭和52年(1977年)、沖縄県生まれ。
城間びんがた工房十五代・城間栄順の長男として育つ。
学歴・海外研修
- 平成15年(2003年)より2年間、インドネシア・ジョグジャカルタ特別州に滞在し、バティック(ろうけつ染)を学ぶ。
- 帰国後は城間びんがた工房にて、琉球びんがたの制作・指導に専念。
受賞・展覧会歴
- 平成24年:西部工芸展 福岡市長賞 受賞
- 平成25年:沖展 正会員に推挙
- 平成26年:西部工芸展 奨励賞 受賞
- 平成27年:日本工芸会 新人賞を受賞し、正会員に推挙
- 令和3年:西部工芸展 沖縄タイムス社賞 受賞
- 令和4年:MOA美術館 岡田茂吉賞 大賞 受賞
- 令和5年:西部工芸展 西部支部長賞 受賞
主な出展
- 「ポケモン工芸展」に出展
- 文化庁主催「日中韓芸術祭」に出展
- 令和6年:文化庁「技を極める」展に出展
現在の役職・活動
- 城間びんがた工房 十六代 代表
- 日本工芸会 正会員
- 沖展(沖縄タイムス社主催公募展)染色部門 審査員
- 沖縄県立芸術大学 非常勤講師
プロフィール概要
はじめまして。城間びんがた工房16代目の城間栄市です。私は1977年、十五代・城間栄順の長男として沖縄に生まれ、幼いころから紅型の仕事に親しみながら育ちました。工房に入った後は父のもとで修行を重ねつつ、沖縄県芸術祭「沖展」に初入選したことをきっかけに本格的に紅型作家として歩み始めました。
これまでの道のりの中で、沖展賞や日本工芸会の新人賞、西部伝統工芸展での沖縄タイムス社賞・西部支部長賞、そしてMOA美術館の岡田茂吉賞大賞など、さまざまな賞をいただくことができました。また、沖展の正会員や日本工芸会の正会員として活動しながら、審査員として後進の作品にも向き合う立場も経験しています。
私自身の制作で特に印象に残っているのは、「波の歌」という紅型着物の作品です。これは沖縄の海を泳ぐ生き物たちの姿を、藍型を基調とした布に躍動感をもって表現したものです。伝統の技法を守りつつ、そこに自分なりの視点や工夫を重ねることで、新しい紅型の可能性を切り拓きたいという思いが込められています。こうした活動を通して、紅型が沖縄の誇る伝統工芸であるだけでなく、日本、そして世界に発信できるアートであると感じています。
20代の頃にはアジア各地を巡り、2003年から2年間はインドネシア・ジョグジャカルタでバティック(ろうけつ染)を学びました。現地での生活や工芸の現場を通して、異文化の技術や感性にふれ、自分自身の紅型への向き合い方にも大きな影響を受けました。伝統を守るだけでなく、常に新しい刺激や発見を大切にしています。
最近では、「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」など、世界を巡回する企画展にも参加する機会が増えてきました。紅型の技法でポケモンを表現するというチャレンジは、私自身にとっても大きな刺激となりましたし、沖縄の紅型が海外のお客様にも響く可能性を感じています。
メディアにも多く取り上げていただくようになりました。テレビや新聞、ウェブメディアで工房の日常や制作現場が紹介されるたびに、「300年前と変わらない手仕事」に込めた想いを、多くの方に伝えたいと強く思います。