「城間びんがた工房で紅型の誕生に立ち会う時間」

おはようございます!いつもブログをご覧いただき、本当にありがとうございます。

沖縄では台風が立て続けに発生しており、少し天気も崩れがちな朝です。今年は不思議と台風が直撃することなく過ぎ去っている印象で、自然の移ろいをしみじみと感じながら、今月末のイベント「祝いの布」展の準備を進めております。

イベント「祝いの布」展のご案内

11月29日(金)と30日(土)の開催に向けて、ありがたいことに少しずつご予約が埋まってきています。午前10時と午後2時の2回、それぞれ90分のプログラムで皆さまをお迎えいたします。ここでは、さらに詳細をお伝えできればと思います。

工房見学

最初にご案内する工房見学では、紅型の制作現場を間近でご覧いただきます。伝統の技が息づく場所で、染料や型紙の香りが漂う中、職人たちの一つひとつの工程に込められた技術と情熱を感じていただけます。紅型の色鮮やかな染料が生地に少しずつのせられ、模様が生き生きと浮かび上がってくる様子はまさに職人技の見どころです。静かな空間に道具の音や染料が刷り込まれる音が響き、まるで紅型の物語が生まれる瞬間に立ち会うような感覚を味わえると思います。ただし、補足させていただきたいのは、金曜日は職人が作業している状態での工房見学となりますが、土曜日は工房が休みのため、職人がいない状態でのご案内となります。そのため、土曜日は実際に染め上がる瞬間のライブ感をご覧いただくことはできませんが、工房そのものが持つ空気感や、紅型制作に息づく静かな「いぶき」を感じ取っていただければと思います。

この違いをご理解いただいた上で、どちらの時間帯でも、紅型の魅力や工房の持つ特別な空間を楽しんでいただけるよう、ご案内いたします。どうぞよろしくお願いいたします。

琉球舞踊の鑑賞

次に、琉球舞踊の鑑賞をご用意しております。伝統の音楽が流れると、琉球独特の色彩をまとった舞踊家が、ゆったりとしたリズムで舞い始めます。赤や青、黄色といった鮮やかな紅型の衣装が、踊りの動きとともに美しいグラデーションを見せ、舞踊の一つひとつの動きが沖縄の自然や人々の心を表現しています。舞台と客席の距離が近いので、舞踊の繊細な動きや衣装のディテールをじっくりとご堪能いただけます。普段はなかなか感じられない琉球の文化が、目の前で繰り広げられる瞬間です。

ギャラリー鑑賞

最後は、ギャラリースペースでの作品鑑賞です。こちらでは、紅型のタペストリーや小物など、工房の作品が展示されています。光の当たり具合で微妙に色が変わる紅型の布を、ぜひ手に取ってご覧いただければと思います。それぞれの作品には、古来の吉祥文様から沖縄の自然を表現したものまで、多彩なデザインが込められており、一つひとつに背景やストーリーがあります。心に響くものを見つけていただければ、作品はご購入いただくことも可能です。

このイベントを通じて、紅型の制作現場、琉球舞踊、そして作品そのものに込められた沖縄の美と技を感じていただける時間になればと願っております。ご興味のある方は、どうぞご連絡くださいませ。チラシには、私の連絡先も記載しておりますので、直接ご連絡をいただければ幸いです。

どうぞ、素晴らしい沖縄の文化に触れるひとときをお楽しみください。

公式ホームページでは、紅型の歴史や伝統、私自身の制作にかける思いなどを、やや丁寧に、文化的な視点も交えながら発信しています。一方でInstagramでは、職人の日常や工房のちょっとした風景、沖縄の光や緑の中に息づく“暮らしに根ざした紅型”の表情を気軽に紹介しています。たとえば、朝の染料作りの様子や、工房の裏庭で揺れる福木の葉っぱ、時には染めたての布を空にかざした一瞬の写真など、ものづくりの空気感を身近に感じていただける内容を心がけています。

紅型は決して遠い伝統ではなく、今を生きる私たちの日々とともにあるものです。これからも新しい挑戦と日々の積み重ねを大切にしながら、沖縄の染め物文化の魅力を発信し続けていきたいと思います。ぜひInstagramものぞいていただき、工房の日常や沖縄の彩りを一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。

城間栄市 プロフィール昭和52年(1977年)、沖縄県生まれ。

城間びんがた工房十五代・城間栄順の長男として育つ。

学歴・海外研修

  • 平成15年(2003年)より2年間、インドネシア・ジョグジャカルタ特別州に滞在し、バティック(ろうけつ染)を学ぶ。
  • 帰国後は城間びんがた工房にて、琉球びんがたの制作・指導に専念。

受賞・展覧会歴

  • 平成24年:西部工芸展 福岡市長賞 受賞
  • 平成25年:沖展 正会員に推挙
  • 平成26年:西部工芸展 奨励賞 受賞
  • 平成27年:日本工芸会 新人賞を受賞し、正会員に推挙
  • 令和3年:西部工芸展 沖縄タイムス社賞 受賞
  • 令和4年:MOA美術館 岡田茂吉賞 大賞 受賞
  • 令和5年:西部工芸展 西部支部長賞 受賞

主な出展

  • 「ポケモン工芸展」に出展
  • 文化庁主催「日中韓芸術祭」に出展
  • 令和6年:文化庁「技を極める」展に出展

現在の役職・活動

  • 城間びんがた工房 十六代 代表
  • 日本工芸会 正会員
  • 沖展(沖縄タイムス社主催公募展)染色部門 審査員
  • 沖縄県立芸術大学 非常勤講師

プロフィール概要

はじめまして。城間びんがた工房16代目の城間栄市です。私は1977年、十五代・城間栄順の長男として沖縄に生まれ、幼いころから紅型の仕事に親しみながら育ちました。工房に入った後は父のもとで修行を重ねつつ、沖縄県芸術祭「沖展」に初入選したことをきっかけに本格的に紅型作家として歩み始めました。

これまでの道のりの中で、沖展賞や日本工芸会の新人賞、西部伝統工芸展での沖縄タイムス社賞・西部支部長賞、そしてMOA美術館の岡田茂吉賞大賞など、さまざまな賞をいただくことができました。また、沖展の正会員や日本工芸会の正会員として活動しながら、審査員として後進の作品にも向き合う立場も経験しています。

私自身の制作で特に印象に残っているのは、「波の歌」という紅型着物の作品です。これは沖縄の海を泳ぐ生き物たちの姿を、藍型を基調とした布に躍動感をもって表現したものです。伝統の技法を守りつつ、そこに自分なりの視点や工夫を重ねることで、新しい紅型の可能性を切り拓きたいという思いが込められています。こうした活動を通して、紅型が沖縄の誇る伝統工芸であるだけでなく、日本、そして世界に発信できるアートであると感じています。

20代の頃にはアジア各地を巡り、2003年から2年間はインドネシア・ジョグジャカルタでバティック(ろうけつ染)を学びました。現地での生活や工芸の現場を通して、異文化の技術や感性にふれ、自分自身の紅型への向き合い方にも大きな影響を受けました。伝統を守るだけでなく、常に新しい刺激や発見を大切にしています。

最近では、「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」など、世界を巡回する企画展にも参加する機会が増えてきました。紅型の技法でポケモンを表現するというチャレンジは、私自身にとっても大きな刺激となりましたし、沖縄の紅型が海外のお客様にも響く可能性を感じています。

メディアにも多く取り上げていただくようになりました。テレビや新聞、ウェブメディアで工房の日常や制作現場が紹介されるたびに、「300年前と変わらない手仕事」に込めた想いを、多くの方に伝えたいと強く思います。