父(栄順さん)と私(栄市)と

父親と私のこと。父は毎朝5時に起き、夕方5時に仕事を終えるという生活リズムを続けており、現在90歳になります。今でもほとんど変わらないそのリズムを保っています。私が生まれたときからその生活習慣があり、それ以前のことはわかりませんが、少なくとも私の記憶では、日曜日でさえそのペースで過ごしていました。

私から見た父は、工房の主として「とにかくコツコツと仕事をしなさい」という姿勢を貫いている人です。「しっかりと良い仕事をすれば、誰かが見てくれている。だから、自分からアピールする必要はない」といった考え方を持っています。ブログを作る必要もないと感じていたように(実際にそう言われたわけではありませんが💦)、本当に職人らしい、仕事に専念する人でしたし、今でもそうです。

私が20代の頃、インドネシアに行きたいという夢を抱いていました。アジアの工芸を学び、沖縄の工芸をさらに発展させるという若く熱い思いを30分ほど父に語りました。その時、祖父が住んでいた建物の応接室で、父と二人っきりで話をしました。父は無言で私の話を聞いてくれていましたが、最後に「何を言っているのかよくわからないけれど、早く寝て早く起きなさい」とだけ言いました。当時の私には、なんて平凡でつまらないアドバイスだろうと生意気に感じていました。私の若い志や展望が大きく膨らんでいたため、地に足のついた父の発言が小さく感じたのだと思います。

それから約20年が経ち、私は工房を引き継いで12年になります。今では、父が言っていた「早く寝て早く起きること」の大切さが身に染みてわかり、ここ6年ほどで朝5時に起きる生活習慣を身につけることができました。父との関係が完全に理解し合えているのかどうかはわかりませんが、少しずつ父の立場に近づき、その考えや役割を理解できるようになってきたのが、今の私です。

城間栄順作品 城間栄市作品

城間栄市 プロフィール

  • 昭和52年 沖縄県に生まれる。城間びんがた工房15代 城間栄順の長男。
  • 平成15年(2003年) インドネシア・ジョグジャカルタ特別州にて2年間バティックを学ぶ。
  • 平成25年 沖展正会員に推挙。
  • 平成24年 西部工芸展 福岡市長賞 受賞。
  • 平成26年 西部工芸展 奨励賞 受賞。
  • 平成27年 日本工芸会新人賞を受賞し、正会員に推挙される。
  • 令和3年 西部工芸展 沖縄タイムス社賞 受賞。
  • 令和4年 MOA美術館岡田茂吉賞 大賞を受賞。
  • 令和5年 西部工芸展 西部支部長賞 受賞。
    • 「ポケモン工芸展」に出展。
    • 文化庁「日中韓芸術祭」に出展。
  • 令和6年 文化庁「技を極める」展に出展。

現在の役職

  • 城間びんがた工房 16代 代表
  • 日本工芸会 正会員
  • 沖展(沖縄タイムス社主催公募展)染色部門審査員
  • 沖縄県立芸術大学 非常勤講師
  • 沖縄大学 非常勤講師