かつての暮らしを彩った布—沖縄の「うちくい」と筒描き
2025.02.03
筒描きの魅力と未来への願い
こんにちは。いつもご覧いただき、ありがとうございます。皆様の好奇心によって、紅型を通じて琉球の文化が広がっていくことに心から感謝しています。今日は「筒描き」について少しお話ししたいと思います。
筒描きとは?
写真にあるように、筒描きは 2メートル四方や130センチ四方 などの大きな布に直接図柄を描く技法です。特に 「うちくい」(沖縄の飾り風呂敷)に多く用いられ、かつては沖縄の 冠婚葬祭や結納などの晴れの日 に家の中を彩る布として飾られていました。

また、6メートルにも及ぶ長い布に筒描きを施し、 村芝居の舞台幕や行事の装飾 としても活用されていた歴史があります。
筒描きの技法
筒描きは 「糊置き」 の技術を使って柄を描きます。写真のような道具に もち米と米ぬかを練り合わせた糊 を入れ、筒の先端から糊を押し出しながら布に直接描いていきます。紅型は基本的に型染めが主流ですが、筒描きは より自由に、大きな画面にダイナミックな図柄を描ける技法 です。

かつての工房と筒描きの盛況
私の祖父・栄喜の時代、特に戦後20年ほどの間は 筒描きの仕事が非常に多く、1日に20枚もの大きな布に柄を描いていたという話を母から聞いたことがあります。沖縄の伝統文化と深く結びついた技法であり、職人たちにとっても重要な技術でした。
しかし、時代とともに沖縄の 生活習慣そのものが変化 し、かつてのように筒描きが活躍する場面は減少してしまいました。今では、この技法を披露する機会もほとんどありません。

未来へ繋ぐ試み
それでも私は この表現方法に大きな可能性を感じています。10年ほど前から、帯や着物に筒描きを取り入れ、伝統技法を現代の形に昇華させる試みを始めました。



祖父・栄喜が 戦後、アメリカ兵向けに紅型ポストカードを染めた ように、 技術を磨くには手に取ってくださる方がいて初めて成立する ものです。筒描きが再び現代の暮らしに溶け込む形を模索しながら、新しい作品を生み出していきたいと考えています。
たしかに、かつてのように 大きな作品を制作し、生活の一部として使われるのは難しくなった かもしれません。しかし、その価値を現代にどう取り入れられるのかを考え、 新しい形で伝統を残すこと もまた、私たちの役割だと思っています。
伝統の継承と新たな挑戦
今の時代に合った作品を作りながらも、 いつか再び沖縄の生活の中に筒描きの大きな作品が戻る日を夢見ています。そのために、今できることを少しずつ積み上げ、技術を磨き、伝統をつなぐ道を歩み続けていきます。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。皆様の好奇心が、私たちの挑戦を支えてくれています。これからも、紅型とともに琉球文化を未来へ繋いでいきます。








城間栄市 プロフィール
- 昭和52年 沖縄県に生まれる。城間びんがた工房15代 城間栄順の長男。
- 平成15年(2003年) インドネシア・ジョグジャカルタ特別州にて2年間バティックを学ぶ。
- 平成25年 沖展正会員に推挙。
- 平成24年 西部工芸展 福岡市長賞 受賞。
- 平成26年 西部工芸展 奨励賞 受賞。
- 平成27年 日本工芸会新人賞を受賞し、正会員に推挙される。
- 令和3年 西部工芸展 沖縄タイムス社賞 受賞。
- 令和4年 MOA美術館岡田茂吉賞 大賞を受賞。
- 令和5年 西部工芸展 西部支部長賞 受賞。
- 「ポケモン工芸展」に出展。
- 文化庁「日中韓芸術祭」に出展。
- 令和6年 文化庁「技を極める」展に出展。
現在の役職
- 城間びんがた工房 16代 代表
- 日本工芸会 正会員
- 沖展(沖縄タイムス社主催公募展)染色部門審査員
- 沖縄県立芸術大学 非常勤講師
- 沖縄大学 非常勤講師