あなたと紅型を繋いだ90分の特別な時間
2024.12.01
おはようございます!
本日もこのブログをご覧いただき、心より感謝申し上げます。青空が広がる爽やかな朝、沖縄にも北風が吹き、少し肌寒さを感じる季節となりました。現在の気温は朝9時で17度。沖縄にとっては冬の入り口といったところでしょうか。
さて、昨日をもちまして、二日間にわたるイベント「祝いの布展」が無事に終了いたしました。この場をお借りして、改めて感謝の気持ちをお伝えいたします。午前・午後ともに定員15名の枠が満席となり、多くの方々にご参加いただけたことは本当にありがたく、運営者一同感動しております。
イベントの内容
今回のイベントは、ものづくりの現場を感じていただくことを目的に、90分のプログラムを構成しました。
- 30分間の工房見学
職人たちがどのように紅型を制作しているのかを間近でご覧いただきました。手元の作業や道具の扱い方など、普段なかなか目にすることのない工程を体感いただけたのではないかと思います。 - 30分間の琉球舞踊鑑賞
琉球の美しい衣装とともに、その動きや音楽が紡ぐ物語を楽しんでいただきました。紅型がどのように舞踊の衣装として活かされてきたのか、伝統芸能の中で生きる紅型の魅力をお伝えできたと思います。 - ギャラリーでの解説と鑑賞
最後にギャラリースペースにて、紅型作品をご覧いただきました。一点一点に込められた物語や工夫について解説しながら、じっくりと作品を感じていただけた時間だったかと思います。
感じたこと、次への課題
イベント全体を振り返りながら、私たち自身も多くの学びを得ました。琉球王朝時代から続く紅型という手仕事は、時代ごとの大きな変化に向き合いながら、その価値を模索し続けてきました。
- 琉球処分:琉球王国が廃され日本に編入された時代。
- 戦後復興:祖父の時代には、戦争で全てを失い、ゼロから工房を立て直しました。
- 本土復帰:アメリカ統治から日本へ戻ったタイミングで、父は紅型を和服の世界に広げる挑戦を始めました。
それぞれの時代に突きつけられる課題を乗り越えながらも、100年以上変わらない制作工程を守り続けてきた紅型。その伝統と革新のバランスをどう保ち続けるのか――今回のイベントを通じて、多くのことを考えさせられる貴重な時間となりました。
ご参加いただいた皆様への感謝
特に今回、前回の6月に初めて行ったイベントとは違い、より親近感のある形で開催できたように思います。不特定多数の方々に向けてではなく、紅型に興味を持ってくださる方々に直接お声がけし、ご参加いただいたことで、濃密なコミュニケーションの場が生まれました。多くの情報をお伝えする中で、皆様が熱心に聞き入ってくださる姿に励まされました。
運営チームとしても、大きな経験と学びを得られる機会となり、これからの活動へのエネルギーをいただいた気持ちです。本当にありがとうございました。
次回に向けて、さらに内容を深めつつ、紅型の魅力をお伝えできるよう準備してまいります。引き続き、城間びんがた工房をどうぞよろしくお願いいたします。
感謝を込めて
城間びんがた工房一同




I紅型に、時間と祈りを宿す
私は紅型を、単なる染色技法ではなく、
沖縄という土地で積み重ねられてきた時間や祈り、
そして暮らしの感覚を受け止める「文化の器」だと捉えています。
布に色を置くという行為の奥には、
自然へのまなざし、人への想い、
そして生き方そのものが静かに重なっています。
その感覚を、できるだけ正直に、今の時代の言葉と形で手渡していくこと。
それが、私が紅型と向き合い続ける理由です。

生い立ちと紅型との距離
1977年、沖縄県生まれ。
城間びんがた工房十五代・城間栄順の長男として育ちました。
幼い頃から、工房は日常の延長線上にありました。
染料の匂い、布を干す風景、
職人たちの背中や交わされる何気ない会話。
それらは特別なものというより、生活の一部として、自然に身の回りにありました。
本格的に工房に入り、父のもとで修行を始めたのは、
沖縄県芸術祭「沖展」への初入選をきっかけとしています。
紅型を「受け継ぐもの」としてではなく、
自分自身の人生として引き受ける覚悟が、
そのとき初めて定まったように思います。
外の世界で学んだこと
2003年からの約2年間、
インドネシア・ジョグジャカルタに滞在し、
バティック(ろうけつ染)を学びました。
異なる気候、異なる宗教観、異なる生活のリズム。
その中で工芸がどのように根づき、人々の暮らしと結びついているのかを、
現地での生活を通して体感しました。
この経験は、
「伝統を守ること」と「変化を受け入れること」は、
決して相反するものではない、
という確信を私にもたらしました。
受賞・出展についての考え方
これまで、沖展、日本工芸会、西部伝統工芸展、
MOA美術館岡田茂吉賞など、
いくつかの評価や賞をいただいてきました。
また、文化庁主催の展覧会や、
「ポケモン工芸展」など、国内外に向けた企画展にも参加する機会を得ています。
こうした節目を迎えるたびに、
私自身の評価以上に、
紅型という存在を知ってもらう機会が広がっていくことに、
大きな喜びを感じています。
一つの作品が、
「沖縄にはこういう染め物があるのですね」
という小さな気づきにつながる。
その積み重ねこそが、紅型の未来を静かに支えていくのだと感じています。
制作について
制作では、伝統的な技法を大切にしながらも、
その時代、その感覚にしか生まれない表現を探り続けています。
代表作の一つである紅型着物《波の歌》では、
沖縄の海を泳ぐ生き物たちの姿を、
藍色を基調に、リズムと奥行きを意識して表現しました。
新しさを声高に主張するのではなく、
布に触れた人が、
どこか懐かしさや安心感を覚えるような仕事を目指しています。
今、そしてこれから
現在は、
城間びんがた工房十六代代表として制作を行いながら、
日本工芸会正会員、沖展染色部門審査員、
沖縄県立芸術大学非常勤講師としても活動しています。
これらの役割もまた、
紅型を「閉じた世界」に留めず、
次の世代や、まだ出会っていない人たちへと
静かにつないでいくための一つの手段だと考えています。
これからも、
展覧会やさまざまな協働を通して、
紅型という文化に触れる“入り口”を、少しずつ増やしていきたい。
それは広げるためというより、
必要な場所に、必要なかたちで、そっと灯りを置いていく
そんな感覚に近いものです。
おわりに
公式ホームページでは、
紅型の歴史や背景、制作に込めた考えを、
少し丁寧に言葉にして残しています。
Instagramでは、
職人の日常や工房の空気、
沖縄の光や緑の中で息づく紅型の表情を、
より身近な距離感でお伝えしています。
どちらも、紅型を「特別なもの」にするためではなく、
今を生きる私たちの暮らしと、
静かにつながる存在として感じていただくためのものです。
この場所を訪れてくださったことが、
紅型との、ささやかな出会いとなれば幸いです。

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